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ベタでも良い、やっぱり「ニューシネマパラダイス」は素晴らしい

 なんなのよ。「ニューシネマパラダイス」って。そんなに良いの? 熱心過ぎて好みが偏っている人たちなんじゃないの? って、よく知りもしないで20歳の頃、失礼ながらそう思っていた。映画にハマり、映画雑誌も買っていて。評論家たちが前年だったかの映画、好きだったトップ3の中に、こぞって入れていた。1990年頃の話だ。

 それでも好奇心に負けて、ビデオを借りて観た。

 初めて観た時の印象は、クライマックスに「なんてオシャレな……」「イキだわあ」って胸がいっぱいになった。でも大人たちがちょっと怖く感じた。きっと私はまだ子供の名残が強かったのだろう。
 その後もう一度観なおして、大人が思っていたより優しくて、ああなんだそんなに怖くないじゃないかと安心した。余韻が強くて、ノスタルジックな映画だなあ。映画が好きな人に向けての映画に間違いないなあ。胸がいっぱいになっただけでなく、大好きな映画になった。

 今まで観た映画の中で好きなトップ幾つを挙げるのってすごくすごく難しい。ズバ抜けて好きな映画がたくさんあって、出来の良くないものとか評判の悪くないものとかも私にとっては愛おしくて、並べて良いのかどうかわからなかったり。でも「好き」なんだから良い。
 多分、トップ10の中に、25くらいの映画がギュウギュウに入っている。
 それはトップ10とは言わない。
 と言われても、でも選べないからトップ10と言われたら、やっぱり25くらいは選ばせてほしい。

 「ニューシネマパラダイス」はそれで言えば、トップ3に入っている。ちなみにトップ3の順番もつけられない。多分「マイガール」が一番好きなのだけど、自信がない。今回「ニューシネマパラダイス」を観て「一番にも5本くらいあるかも」と思っちゃった。一番に5本だったら、トップ10は、もしかしたら50本くらいあるかしら。

 その後、夫が映画をよく観るようになってから「どうしても一緒に観てほしい」と、ディスクで一緒に観た。夫は、家でビデオを観ることに、当時あまり気が進まないようだったので、「結婚記念日、何も要らないから一緒にこれを観て」と頼み込んだ。
 当時はまだ、「とにかく」クライマックスシーンを観てもらうまで我慢だと思っていた。
 夫は「うおお、ヤラレた~!」って感動してくれた。


 あれから10年ほど。これを、たった一週間だけ映画館で上映してくれると知ったから「映画館で一度観てみたいね」と互いに話した。

 私は記憶の中だけで3回は観ているから、あらすじはもちろん、クライマックスも覚えているし、泣いてしまうほどの衝撃はないんだよなあ。

 でも大好きだから楽しみにしていた。

 ―なんてもんじゃなかった。

 こんなにグッと来るのか? って今まで何を観ていたのか自分を疑うくらい、もう中盤から心をぐわんぐわんに揺さぶられちゃう。
 きっと年齢を重ねて、観方が変わったのだろう。お母さんの、息子への思いを感じ、幼いトトのお父さんやお母さんへの思い、アルフレードへの思いを感じる。
 席を空けてあるにしても、隣りのおばさんも何度もマスクを取って頬を拭っている。わかる。わかるよ~。私はマスクに垂れ流しだ。

 その後、大人になってからのトトのシーンはほとんど泣いていた。歳なのか? 涙もろくなったのか? いやきっと歳を重ねてきた人たちの気持ちがわかるようになったのだ。大人たちの中にも怖い人なんていない。みんな温かい。間違ったところはあるかもしれないけど、トトを好きだったり映画が大好きだったり、映画館が好きだったり、一人ひとりみんなの感情が伝わってくる。
 郷愁とか懐かしさって、映像と音楽とでこんなにも伝わるのか。私の場合、若い頃の方が少し時間が長く感じた。今はその時間を味わい、こうやってじっくりかけてこその表現だよなあとしみじみする。そしてジャック・ペランの演技が、先日亡くなったモリコーネの曲に乗せて、魅せてくれる。

 完全版の内容や意図は知ったけど、それだとモヤモヤがすごく残りそうだから、私はこの劇場版が好き。

 映画を愛する人たちの映画だから、映画が好きな人がこの映画を斜めに観れるとは思えない。映画が好きならきっと好きになる。
 ベタを言うと、本当にそのジャンルの良さがわかっているのか、って思われる。知っている。でも言いたい。

 やっぱり「ニューシネマパラダイス」は良い!


#映画 #感想 #ニューシネマパラダイス #郷愁 #好き

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