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詠む【自作歌置き場】

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川田果弧の歌です
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塔 2017年2月号掲載歌/川田果弧

自転車に通学してゆく少女らのスカートの襞交互に尖る
ハンドルの無き蛇口立つ裏庭にかたばみの花咲きて静もる
秋晴れのプールサイドに軽鴨は嘴ふるはせて首をしまへり
おもむろに吹かるる Over the Rainbow 虹の手前に二度つまづきぬ
荻の穂の揺るる彼方にかがよへり今し吹かるるトランペットが
荻原はクリーム色の陽に染みぬとんび平たき螺旋を描く
死のうよと誰彼にいふ酔ひどれの袖口に貝の釦が光る

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塔 2017年1月号掲載歌/川田果弧

声あげて素足に浅瀬をわたりゆく子らの腓にひかりの鱗
積雲の天辺きらり光りをり乗り越したれど顔には出さず
曽祖父は名をニヘイと言ふ うはごとに西瓜欲りつつ逝きにしと聞く
眼鏡にぶつかり来たる青金蚉 日なかの月はうすく削がれて
登戸駅ゆ乗りしタクシーの助手席に多摩川梨の積まれてをりぬ
恋人に梨買ひにきとふ運転手の形よき眉ミラーに映る
ひと枝に咲き残りゐる百日紅あなたの声を憶えてゐます

(若葉集/江戸

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塔 2016年12月号掲載歌/川田果弧

小さなる木彫りの象のキーホルダー開くドアもう無き鍵に下がれる
けふ夫は小諸へ行きて天気予報地域選択長野県とす
公園へ移されし馬頭観音に紅き造花の供へられをり
消火器にバリエーションのありと聞き人気色とふオレンジを買ふ
立ち話する人の影伸びゆきて隣町との境越えたり
エアコンの修理工来て皺ふかき手にはふたつの結婚指輪
波のごと風はかたちをあらはして夏野の草の裏のしろがね

(若葉集/前田康子選)

塔 2016年11月号掲載歌/川田果弧

前輪のなき自転車の棄てられておしろいばながめぐりに咲きぬ
教卓の抽斗に飼ふお蚕に水泡のやうに君は触れたり
スプライト二缶を投ぐ雲梯の上で夕雲眺めゐる君に
夏の野に紛れてわれもそよぎたり 君の街より夕立よ来よ
自転車の二台がふいに近付きてせえのと少年少女にキスする
別れしとふ電話のまたもかかり来ぬ薬缶の麦茶いまだ温とし
ひさかたの月の真下のバス停で人運びゆくバスを見送る
「ウスターソースちよつと垂ら

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塔 2016年10月号掲載歌/川田果弧

わが嫁ぐ朝に姉貴と呼びかくる弟鴨居に額をつけて
ベランダに雀の糞の黒くあり野に桑の実の熟れたるころは
僕といふ一人称のをみなごのあけぼの色のひなげしを摘む
音のなき裏門に咲くあぢさゐは監視カメラに撮られてゐたり
どの人も供花を提げつつ列となり服部坂をしづかに上る
苔生せる地蔵の面眺めをり 祖父に遺影の一枚もなく
コトコトと父の手になる椅子揺らし子は『人体のしくみ』読みをり
チヨさんは目の見えぬ犬か

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