27歳なりに読んだ人に感動を刻む小説書いてく予定が世界救ってた 第5話~希少な〇〇~
「何を言ってるの?そうやって驚かそうとしても無駄よ」
優華は笑いながら答えると、話をそらすように目線をスモークが効いた車の窓へ向けた。
釣られて僕も窓を見ると、田んぼで囲まれた道を走っていた。
スモークのせいかどこを走っているのかまでは分からない。
「もう着くから外出る準備してね」
殴られる前に準備をしたカバンが右足のそばに置いてあることに気が付き、持ってきた中身(特にえっちな漫画)が入っているかゴソゴソと確認していると、
「優華様、到着致しました」
「ありがとう、怜。かわちゃん、行くよ」
この運転手は怜(れい)という名前だったのか、と思いながらカバンを閉めて車の外へ出た。
すると、車の前には田んぼで囲まれた田舎には似つかわしくない程の大きく立派な屋敷が立っていた。
僕は心の中で――大奥ってこんな場所が舞台だったのかな――と思った。
「ささぁ、中に入った~!私はかわちゃんと話したいから怜はここでお留守番よろしく!」
「かしこまりました、優華様。厠、くれぐれもふざけた真似を起こさないように」
「助けてもらってるのにそんなことしないよ。さっき言い忘れてたけど怜さん、助けてくれてありがとう」
「私は優華様たっての望みを叶えただけです」
気のせいかもしれないが少し恥ずかしそうに見えた気がしたが、そんなことを考える間もなく優華に腕を引っ張られて大奥屋敷の一室へ上がった。
「ふう、これで少しは安心かな。ここなら周りにほとんど人が居ないし。それより話したいことがあるの。かわちゃんが書いた小説【人殺しと呼ばれた神代一族】が発端で、ある事件が起きた。NEWSで見た通り、かわちゃんの命が狙われてるの。でもね、私は命を懸けて守るから」
真っ白な優華の頬を、一筋の流れ星が消えていった。
ただの一瞬にこぼれた涙に目を奪われた時、どうして人が流れ星に願い事を唱えられないのかわかった。
こうして僕は、希少な協力者に出会った。
by克也
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