27歳なりに読んだ人に感動を刻む小説書いてく予定が世界救ってた 第3話~〇〇に抱かれて~
「かわちゃん、驚いた?」
僕は座り込んだまま自分の部屋を見渡した。
優華の足元には大きな鋏が落ちていて、佐藤さんが胸元にあった盗聴器のように見えたベリブレードをポケットに入れながらクスクスッと笑っているのが目に映った。
目覚まし時計は14時を過ぎていた。
「佐藤さん、協力してくれてありがとね。やっとかわちゃんに会うことが出来た」
まだ僕は意味が分からずそのまま優華と佐藤さんの話を聞いていた。
「いえいえ、優華ちゃんの力になれて良かったです。まさか私と優華ちゃんが幼馴染だって厠さんは思わなかったんじゃないですか?」
どうやら話を聞くと佐藤さんと優華は親同士が友達で今でもSNSでやり取りをしているようだ。
実は僕がミステリー小説を書かなくなった理由はもう1つある。
もうお分かりかもしれないが、「人殺しと呼ばれた神代一族」のタイトルは神代優華の名字からきている。
この小説で賞を取った後、優華が見ず知らずの男に包丁で切り付けられたのだ。
今でも忘れられないこの事件から、透き通ったように白い優華の背中には大きな横一文字が刻まれた。
「かわちゃん、ここにいたら危険だからすぐに場所を移そう」
あれ?さっきまで扉の外で話していた人はどこにいったんだろうと考えていたのが分かったのか優華は話を続ける。
「さっき外で聞こえた話し声は私が携帯で流してただけだよ。久しぶりに会うんだから佐藤さんと一緒に脅かしてやろうと思ってね」
天使の様な笑みを浮かべているが、僕は思い出していた。
周りの人は優華を高嶺の花だと言っているが、いつも度が過ぎるいたずらばかりで小悪魔女だったということを。
「もし場所が特定されてたらNEWSでも放送しないでしょ!それくらい考えなさい!でも、今はSNSですぐに場所が特定されちゃうから周りの目が少ない場所に行くよ」
急いで身支度を整えて3日分の着替えと少しえっちなマンガをカバンに詰めた。
「優華、佐藤さん、お待たs」
ゴンッ!!!!!
僕は真っ赤な闇に抱かれて鈍い音を聞く。
目覚まし時計はまもなく15時になろうとしていた。
by克也
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