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やまんばって怖そうだけど、先生大丈夫なの?

 以前勤務していた園では、夕方の合同保育の際もおもちゃを使って遊びながら待っていました。
 一方、今働いている園では時間がきたらおもちゃを片付けて、全員でアニメーションのDVDを見てお迎えを待ちます。

 このスタイルが私には新鮮で、というか最初は受け入れられなくて。

 わざわざ保育園でDVDを見せる必要ってあるの?どうせ家で見るでしょ?
だったら家にいない時間くらい、そういうものから離れた方が良くない?

というスタンスです。これは今もおおよそ変わっていません。これは以前の園で作られていった感覚ですね。

ただ全員が落ち着いて、同じ方向を見ていてくれるという状態が助かることもあって、この時間においては保育者の数を多く配置しなくても良さそう、ということが分かりました。
この仕組みが今の職場の働きやすさに直接反映しているのかは分かりませんが、夕方に人員がそこまで必要ないのであれば時間給をとりやすく、早めに帰宅する等を実現させられていると思います。

ここも正解/不正解を決めつけることはできなくて、施設長が何を重視しているのかによる、ということなんでしょう。

多分、見せた人はいないのだろう

 そのような仕組みの中で、私が夕方の合同保育の当番になり、DVDを準備することになりました。これまでも何回かやっていますが、その都度、園に常備してあるトムとジェリーや、ディズニージュニアのDVDを流していました。

 私が以外の先生たちも基本は同じで、たまに自らディズニーのDVDを持参したり、アマゾンプライムのポケモンを流したりする方もいます。

 夕方のDVDの時間はおおよそ見るアニメーションが固定されつつあったということです。

 そんな状況に私は一石投じることにしました。

ディズニージュニアやポケモンのようなキラキラした映像ではなく、日本昔ばなしを流してみたのです。

おそらく、少なくとも1年間は誰も見せたことはないと思います。

反応はさまざまだった

 この日の合同保育の状況↓

【子どもの人数】未満児:6人 3歳児:8人 4歳児:7人 5歳児:8人 合計:29人
【視聴時間】5:20〜5:55までの35分間
【視聴作品】「かもとりごんべえ」「さんまいのおふだ」

視聴環境を整え、映像を流し始めると、子どもたちの反応はさまざまでした。(図を参照)

これまでは同じよう内容の映像を見ていたことから飽きていた子もいました。しかし今日はディズニーの真逆みたいな、味のある古くさい映像が新鮮だったようで、会話をする子が全くいませんでした。本当に映像に夢中になっていました。

見せてみるものですね。

怖いと泣いた子

 2本目の「さんまいのおふだ」はやまんばが出てくるわけですが、これを怖がる子は絶対いるだろうな〜と思ったら案の定でした。
 (翌日に「先生、あれ怖かった〜!」とその子に言われたので、「ごめんね〜」と謝りました。笑)

 けれど、私はここに良さがあったと思うのです。

ディズニーのヴィラン(悪役)のような見た目で分かる怖さとは違い、気味が悪く“なんか嫌な感じがする“と感じさせるような妖怪のような風貌のやまんば。

画のテイストも相まって、それはディズニー作画では表現できない怖さを伝えてくれたと私は捉えました。

日本昔ばなしというくらいですから、それは昔から受け継がれてきたもので、私も何度も見ました。けれど、今日の29人の反応を見るとほとんどの子が見ていないんだろうなと感じました。

これは大丈夫なんだよね?の確認作業

 ディズニーの映画で“見せては困る“という内容のものは、多分ないと思います。だから大人(保護者・保育者)も安心して見せているわけで、子どもたちもまた安心して見ている。
 しかし、今回のやまんばを初めて見た子の多くは、“これって見ていいんだよね?“と私の顔を何度も見ていました。ここで私が不安そうな顔をしていたら子どもたちはもっと不安になっていたでしょう。けれど、大人である私が「大丈夫。面白いから平気だよ」と怖がっている素振りを見せなかったことで、“なんか怖そうだけど、大丈夫なのかもしれない“と判断したのだと思います。
 視線や表情を手がかりに気持ちの読み取りや推測をすることを、心理学では【社会的参照】と言いますが、この現象が起きていたのではないかと。

相手の気持ちになって考えてごらん?と子どもたちに話すことがよくありますが、そうするにはまず相手の視線や表情を見なくてはなりません。

そのような力を育む機会を奪ってやしないか?と、この日の子どもたちの姿を見て思ったのでした。

本日の参考文献はこちらになります↓


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