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ベルリンのケバブ屋と米津玄師さん

先日、子供が夕飯はケバブがいいというので、近所のケバブ屋に行った。

私は、日常生活に困らないほどのドイツ語スキルはあるが、何しろコミュ障(死語か)なので、スーパーならまだしも、店に夕食を狩りに行く時は、大抵旦那に行かせる。

なので、このケバブ屋にも一ヶ月一度行くか行かないかだ。

私の住む地区は、リトルイスタンブールだ。ケバブ屋も激戦区なのだが、この店がこの辺りでは一番美味しいと思う。

さて、小さい店内には食べている客二人、待ちの客は三人ほどいた。
スタッフは二人。ひょろっとしたお兄さんと、たぶんボスっぽい、少しふっくら気味のトルコのお兄さんだ。
確か、このお兄さんは親日家だった気がする。以前「ありがとう」と言われた記憶が朧げながらあった。

さて、このボスにケバブをふたつ注文して、空いてる席に座っていた。
壁のディスプレイには、ケバブ屋にお決まりのトルコラップのMVが流れている。
ボケッと流れる画面をみていると、ふと目の端でボスがリモコンを操作したのが見えた。

画面が変わって、曲はロック調。アジア人ぽい男性ユニットだ。
流行りのk-popかなと思いながら、暇つぶしに携帯を弄ぶ。
ふと、急に聞き慣れたクールな歌声を耳にし、ディスプレイを見上げた。

あわわわわー、「Lemon」じゃん!
米津さんのLemonのMVが流れていた。

えー、もしかして、ボス、私が日本人だから有線チャンネル変えてくれた?
やっばー。ケバブ屋で米津玄師さんのLemon流れてるとこ、ある?
でも、これすごいサービスじゃない?

予期せぬ米津玄師さんに、ちょっと動揺した。

トルコ人のお客さんいるんですけど。
この日本人一人のために、J-Popチャンネル?
それとも、自分が日本人と一緒に聞きたかった?

いやあ、しかし沁みる。
ちょっと、感情がブワッと来て、目の奥が熱くなったのは、内緒だ。
米津玄師さんの澄んだ声が流れている店内は、どこか異世界のよう。

(ここに歌詞の一部をケバブに変えて書いてみて、なかなか綺麗にハマったのだが、著作権侵害でBANされかねないので、速攻削除した。)

レジでお金を払うとき、ボスがハミングしてたから、つい、釣られて歌ってしまった。
ボスはお釣りを渡しながら「ありがとう」と日本語で言ってくれた。
「(こちらこそ)ありがとう」と答える。

客の心(胃袋も)を掴むとは、こういうことか。
サービスの真髄を目の当たりにした夜だった。




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