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優しさに哭く。

久しぶりに観賞したら泣きに泣いた『西の魔女が死んだ』

ご存知ない方には、一見して「めちゃくちゃ怖い?!」とも思えるタイトルですが、スペシャルピュアな感性で観てほしい珠玉の物語です(私の中で)。
ネタバレしっかりあるので、観てみようかなと思ってある方は戻ってくださいね。

あくまで雰囲気先行の画ですすみません…

ザクっとしたあらすじは、登校拒否になった中学生の少女・まいは、森の中に住む「自分は魔女だ」と名乗る祖母から、魔女になるための訓練を受けることになり…というお話。

さまざまな経験や悩みを抱きながら、生きる答えを探していく主人公・まいが切なくて可愛いんですよ。

イギリス人の祖母を演じたサチ・パーカーさんがまた、とんでもない透明感の持ち主で「本当に魔女かも?!(白魔女の方ね!)」と感じさせる存在です。

この方の発する台詞がまた良くて。
何気ない日常の会話なのに、なぜか涙が込み上げてきて胸が苦しくなりました。深いです。

この映画に出てくる魔女(祖母)の家は、インテリアもクラシックな英国調で異世界のように素敵です。好きな方も多いと思う。

いっそジブリでアニメ化していただいても違和感ないと思います。(その際は宮崎駿監督のアレンジで「本物の魔女?!」的な演出とか観たい。妄想は止まりません。妄想だから許して)

タイトルから受ける印象とはまったく異なる美しさを感じてほしい映画です。

原作は梨木香歩さんの小説「西の魔女が死んだ」

原作は、小説家・梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」です。この作品がデビュー作だそうですが、日本児童文学者協会新人賞、小学館文学賞などを受賞した、代表作ともいえる作品となっています。

2008年に実写映画化され、文部科学省特別選定作品、青少年映画審議会推薦作品などに選ばれました。

小学館文学賞や文科省から選定を受けていることなどから、物語がいかに純粋であるか図ることができるかと思います。

梨木香歩さんの小説は、「西の魔女が死んだ」のほかにも「村田エフェンディ滞土録」や「家守綺譚」など、どこか懐かしく少し不思議な物語がとても魅力的です。
 

どちらも静かでちょっと謎めいた物語です


「村田エフェンディ滞土録」は、青少年読書感想文全国コンクール課題図書にも選定されており、多感で純粋な年頃の心の機微に触れることができる作品と言えるかもしれません。
 
好みがあると思うけど、個人的には文体も好きな作家さんです。

「西の魔女」役、サチ・パーカーさん

魔女の祖母を演じているのは、アメリカの女優・サチ・パーカーさんです。森の中に住む風情がとても似合っていて、美しいおばあちゃんを演じていらっしゃいます。

「魔女」は、英語の教師として日本にやってきたイギリス人で、理科の教師だったおじいちゃんと結婚し、いまは一人で森に住んでいます。その暮らしぶりは、自然とともに生きるワイルドでオーガニックな日々。

毎朝にわとりが産んだ卵をとりに行き、野イチゴを摘み、庭でジャムを作り、ラベンダー畑の上で洗濯したシーツを干す、といった羨ましいほどのナチュラルライフです。

街で育ったまいは、最初こそ畑のナメクジや毛虫やにわとりに怯えますが、祖母と一緒に行う魔女修行の毎日で自然との関わり合いを楽しく感じるようになります。
 
魔女であり祖母であり、そして優しいばかりではなく、人としての心の傷や憎しみにも正面から向き合うことを教える難しい役ですが、映画を観るともうサチ・パーカーさん以外には考えられない。
 
まるで本当にずっとそこに住んでいて、まいのおばあちゃんで、魔女なのかも、と思うくらい自然体に感じます。

ご本人は、子供のころ日本に住んでいて学習院初等科に通っていたらしく、英語、日本語、フランス語、広東語もできるクァドリンガル(マルチリンガルかも)だそう。天才?

CAの経験もあり、その後女優の道へ…。なぜ女優へ転身したかは母親の影響とのことで調べてみると、なんと。シャーリー・マクレーンの娘さんであることがわかりました。
 
シャーリー・マクレーンといえば、アナタ。1955年にヒッチコック監督の『ハリーの災難』でデビューし、『アパートの鍵貸します』や『愛と追憶の日々』などで数々の賞の受賞歴もある往年の大大大女優!

吃驚しましたが、サチ・パーカーさんの存在感と演技は、生粋の女優魂から感じるものなのかも。台詞に暖かみがありすぎて、今も思い出すと涙が出そうになります…。祖母役を引き受けてくださって(個人的に)本当に感謝です!

いまにつながる魔女の言葉

ちょっと思いのたけをブッコミ過ぎましたが…(笑)。
映画『西の魔女が死んだ』で、孫と暮らすことになって初めの頃の祖母の感じと、別れるときの表情や所作をじっくり見てほしいとお伝えしたく。

魔女が魔女見習いに伝えたかった「生きること」を、鑑賞する側も感じ取ることができる素敵な作品だと思います。


※この文章は、2021年に私のブログにて紹介した内容を加筆修正したものになります。

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