ナンバーワン処方薬は誰のため?

心臓血管病(CVD)はアメリカ人の死因のトップ。CDC(アメリカ疾病管理予防センター)によると、36秒に一人がCVDで亡くなり、統計的には亡くなられた人の4人に1人の死因がCVDだそうです。

CVDの危険因子として槍玉に挙げられるのがLDL(Low Density Lipoprotein、低比重リポ蛋白)、いわゆる悪玉コレステロールです。このLDL濃度を下げるために処方される薬がスタチン、アメリカで最も多く使われている処方薬です。

スタチンは、コレステロールを下げる薬で、日本ではピタバスタチン(リバロ)、プラバスタチン(メバロチン)、アトルバスタチン(リピトール)などの名前で処方されています。

しかしスタチンが下げるのはLDL濃度だけで、心疾患のリスクはあまり下げないことが学術的には認識されています(特殊なケースを除いて)。その理由はスタチンが下げるのは、「心疾患に関係ないタイプのLDLコレステロール値(略してLDL-C)だけ」だからです。

LDLの本当の名前は、低比重リポ蛋白(low-density lipoprotein)と言います。表面にアポBリポタンパク質(アポB, apolipoprotein B)を持つ複合タンパク質で、肝臓で、コレステロール、コレステロールエステル、中性脂肪などを積み込んで、全身に運びます。

以前の記事で書きましたが、LDLはコレステロール分子などの脂溶性物質を肝臓から運び出す役割のあるタンパク質でできた殻のようなもので、コレステロール分子ではありません。卵やエビに含まれるコレステロールは、ほとんど吸収されないし、大量に食べてもLDLを上げません。

アポBは、血管表面にくっついて炎症を起こすため、悪玉コレステロールなんて不名誉な名前がついていますが、LDLがなければ、人間は生きていけません。

LDLには、コレステロール分子をたくさん積んだ重いLDL(高密度またはタイプA LDL)と、中性脂肪をたくさん積んだ軽いLDL(低密度またはタイプB LDL)があります。一般的にはLDLの80%がタイプA,残りの20%がB
と言われています。

スタチンが阻害するのは肝臓内のコレステロール分子の製造なので、タイプAだけが減り、タイプBはそのままです。しかしタイプBこそが、心疾患を含む慢性病の指標なのです。

中性脂肪は、砂糖、ご飯、パン、麺類などの炭水化物を食べ過ぎると増えます。というのは、中性脂肪の原料は、ブドウ糖だからです。

スタチンを服用してLDLが下がったからといって、砂糖たっぷりのおかずでご飯ばかり食べていると、心疾患だけでなく、糖尿病、高血圧、慢性腎炎、癌などのリスクが上がります。

スタチン服用で、糖尿病が悪化することが日本でもアメリカでも報告されています。別の記事でも書きましたが、スタチンを服用する前に、少なくともアポB検査を受けることをお勧めします。



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