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初めて自分の人生と約束したこと

自分の人生と初めて約束したこと。「そのひとの前で言えないことは誰にも言わない」「陰口を言わない、同調しない」小学校5年の2学期のこと。

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小学校5年の夏休みに転校した。

そのこと自体に不満はないし、元の小学校の居心地がなかなかに悪かったので、転校は「やっとここから出られる」という解放感しかなかった。

転校先は、新興住宅街が次々できている学区で、毎学期10人規模で転校生が来るという、転校生なんて珍しくもない雰囲気で気が楽だった。

クラスはまとまりある雰囲気で、やわらかな印象の女性の担任の先生。

クラスのまとまりの良さが、「排他的」だという意味だということは数日でわかった。「仲間外れ」があったのだ。そして、「女王様」がいた。

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ひと目で見惚れるほどきれいな子。いつも100点を取る賢い子。きちんとした子。やさしい子。礼儀正しい子。その子がクラスの「女王様」だった。

彼女が「好き」と言えば、クラスの女の子全員が「好き」という。彼女が「なんか嫌い」と言えば、みんなが「なんか嫌だよね」という。そんな女王様。

彼女が明確に指示を出すわけではない。でもみんなが彼女と彼女の感情に注意を払う。彼女の好悪を察して「先んじて」排他的になる。

「あの子、なんだか嫌だよね?」「そうだね」「遊ぶのやめよっか?」「そうだね」という風に。

陰口が渦巻くクラスに私はあっという間に嫌気がさした。みんなが彼女に「右向け右」とするクラスに腹が立った。

その陰で泣いている子がいることを知っていた。悲しそうな顔をしてみんなの輪から離れていく様子を見ていた。それを見送って暗い目を見かわしてクスッと笑うクラスメイトを見ていた。

ぜんぶ、大嫌い!

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担任の呼びかけでクラスの女子だけの学級会が開かれた。

「最近、仲間はずれが流行っているようだけど?」と呼びかける担任。「え~?そんなことないですよ?」とのらりくらりかわすクラスメイト。

そんなやり取りがどのくらい続いたか。犯人探しなどできるわけがない。誰もが相手に責任を押し付け合って、たらい回しにしているのだもの。

クラスメイトのひと言ごとに怒りを募らせていた私はブチ切れて立ち上がった。

「先週の昼休みに、○○さんが○○さんに「遊ばないよ」って言いましたよね?一昨日の放課後に、○○さんが話しかけてきているのに無視しましたよね?思い出せないんですか?」覚えている限りのクラスメイトをつるし上げた。

静まり返る教室。

息を切らして私は座った。そのあとは覚えていない。

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ひとつだけ、強烈に刻み込まれた思いがある。「私はあなたたちのようにはならない。陰口など言わない。相手の前で言えないことは誰の前でも言わない」

怒りと共に刻み込まれた約束は、30年経っても破られていない。

「陰口を言わずに過ごすなんて無理だよ」と何度言われたことか。そのたびに「そうなのかなあ」と不安になりながら、「それでも言いたくない」と思って生きてきた。

結論。陰口は人生に必要ない。

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あの学級会は、それまで、自他ともに認める「のんびり屋」「ほんわか」な自分に火が点いた瞬間。

初めての自分の人生との約束は守られている。これからも守られる。

あの「女王様」。今どうしているのかな?と最近時々思い出す。どうしているんだろう、ほんとうに。

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