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週に一度はパン屋さん

最近近頃、太ってきた数ある理由の一つには、パン作りがある。
ホームベーカリーなるものを買ってしまったのだ。

事の始まりは、何十年ぶりかに中学の同級生とLINEで話をするようになり、遠いところから、手作りパンを「ご賞味あれ!」と贈ってくれたパンがそりゃあもう美味しすぎたことにある。自家製パンってこんなに美味しいの?とたまげてしまった。

お互い長い月日には色々あった。
彼女は、パン作りと縫物に没頭していた。可愛い子供が二人いるが、夫との関係は冷え切って、それをもう修復しようとも思わないでいた。それに付けくわえてお姑さんとの同居で、イライラがマックスになった時、心の逃げ道を作ろうと決心したという。それが、彼女にとってはパン作りと縫物だった。
何かに吹っ切れた様にのめり込み、今ではプロ一歩手前まできている。家庭用で使える小さい窯まで購入するほどの入れ込みようだ。格が違う。
パンの他に自家製味噌も贈ってくれたが、市販の味噌が食べられなく程美味しかった。
彼女は中学時代バレー部のキャプテンだった。責任感が強くて、負けず嫌いで、何をするにも熱心だった。それが今も変っていないことが分かった。

そんな彼女のパンを食べて、家の夫も焼き立てがこんなにうまいとは!と感激してしまったのである。程なくたまたま、自分のツーリング友達の手土産で、奥さんがホームベーカリーで焼いたというパンを頂戴して、腹を決めてしまった。ホームベーカリーを買うことを。
とは言っても、焼くのは夫ではなく、私だ。仕事が増えるではないかと訴えたが、夫は見事に引かなかった。
そして、めんどくさい…と眉をひそめる私の前にホームベーカリがやってきたのである。

が、今ではすっかり私がハマっている。彼女の美味しいパンに追いつけ追い越せと、小麦粉やイーストを調べてとっかえひっかえ、毎週毎週まるで理科の実験のように繰り返した。そもそも彼女が贈ってくれた窯で焼き上げたパンには、ホームベーカリーは適わない。だが、自分好みのパンを突き詰めるため、パンノートを作って、材料の分量を少しづつ変えた。そして5ヶ月ほどかかって漸く好みのパンに辿りついた。

世間ではもちもちふわふわしっとりパンが流行っているようだが、我が家では外側はザクパリ、内側ふわっとが好きなのだ。所謂ハードパンである。何ならフランスパンが大好きだ。
最初は生意気にもイーストは天然酵母に執着していたが、最終的に諦めた。縮こまってしまうからだ。今はフランス産のイーストに落ち着いた。軽やかに膨らむ。
基本の食パンが定まったところで、胡桃やレーズン、ライ麦を混ぜ込んだりして楽しんだ。
いよいよ、フランスパンに足を踏み入れる。でも、カチンコチンになったりネチネチになったり、最初はうまくいかなかった。何より、フランスパン専用の小麦のはずなのに、あの麦の香りがしない…。色々調べて、モルトパウダーというものがあると知り、早速カルディで手に入れた。そして、ほんの少し入れて焼いてみた。
その出来上がりは…、最高にうまい!フランスパンになった。本の少しでこれほど変わるとは思わなかった。
私、天才かもしれないと勘違いするほどに美味しく焼きあがった。仕事をしているのはホームベーカリーなのも忘れて。

夜、寝る前に材料をセットして、ボタンを押すだけ。それだけで朝、焼き立てのパンが食べられる。家中に広がるほのかな甘い香りで目覚める喜び。最高なのだ。おかげで朝食が優雅になった。

調子に乗って、妹にリクエストは?というと、
「クロワッサン。」
ときた。ふんぞり返るほど時間と手間とバターがかかるヤツではないか。
そう言いながら、休みが続く時コネコネしてみた。
ちょっと小さめだったが、やっぱり美味しかった。
焼き立てなら何でも美味しいのかも。

実は日本人はお米の文化なので、築き上げた体にはパン食は消化が悪いらしい。…と、知ったとて、焼き立てパンを我慢できずにいる。
飽きるかと思ったけど、全然飽きないので困っている。
食べて、運動するしかないでしょう。

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