産後の抜け毛に、夫がひとこと。
髪の毛というものは、恋人の頭についている時は、こんなにも愛しいのに、床に落ちた途端、おぞましいものに変わるのは、なぜだろう。
大学生の頃、辞書を片手に読んだフランス人作家の小説に、こんな一文があったことを覚えている。
詩的でなめらかな文であったのに、その生活感あふれる描写がとても気に入り、当時愛用していたルーズリーフバインダーの裏表紙に、原文を書き写して持ち歩いた。
私はこの作家の感性に、ことごとく同意した。
恋人の髪の毛に指を絡めて愛でるとき、誰もが甘い言葉や豊かな