ちょっぴり怖い話(出張で宿泊した民宿)

これは、職場の同僚から聞いた話です。

彼は営業職で、よく出張に出かけていました。

ある地方都市のお客様を訪問する際、お客様拠点の近くにはビジネスホテルがなかったそうです。
旅館でも良いかなと探して現地に赴いたそうですが、旅館とは名ばかりで、素泊まり専用の民宿(1軒屋)だったそうです。

2階に二部屋あり、奥の部屋に通されました。

畳の和室で、部屋の中央に大きなちゃぶ台が置いてあります。
壁際には小さめの液晶テレビが設置されていました。
和室の隣に、洗面所と浴室がありました。
電気ケトルがあったので、お湯を沸かしてお茶を淹れました。

食事は済ませてきたので、明日の仕事の確認をしたら寝てしまおうと考えたそうです。

ちゃぶ台に書類を広げました。
彼は普段から万年筆を使用していました。

万年筆のキャップを開けたところ、インク漏れしていたようで、ちゃぶ台の書類の上と畳の上に、インクが垂れてしまいました。

ティッシュを探したのですが見つけられず、ちゃぶ台の上にあったタオルを使ってインクを拭いました。
インクを吸い取ったタオルを持って洗面所に行き、水でタオルについたインクを洗い流しました。

部屋に戻り、畳を再度濡れタオルで拭ってみましたが、インクの跡は残ってしまいました。
謝らなければいけないなと思いつつ、手に持ったタオルを見ました。

それはタオルではなく、古い手拭いでした。
洗面所で手拭いを洗いながら、ちゃぶ台の上にはこんな手拭いは置いてなかったなと思っていると、和室の照明が点滅しはじめました。

和室を覗くと、暗い部屋の中に、和服の女性がいました。
宙に浮いているようにも見えます。

うわぁ、っと驚くと、すうっと消えてしまいました。

何が起きたのだろう?
呆然とする気持ちを落ち着かせながら、照明がもとに戻った和室で畳の上に腰をおろしました。

ふと気づいたのですが、手拭いがどこにも見つかりません。
和室にも、洗面所にもないのです。

もしかしたら、インクをぶちまけてしまった彼に、手拭いを貸してくれたのかもしれません。

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