コホート&エンゲージメントLTV分析 - Diligence at Social Capital : Part 4

BY JONATHAN HSU       翻訳 : 和田健太郎  監修 : 玉井和佐

このシリーズの第1・2回目の投稿では、ユーザー数収益の分析に応用できるグロース・アカウンティングについて説明した。そして、第3回目の投稿では実用的な顧客生涯価値(LTV: Life Time Value)の分析について紹介した。第4回目にあたる今回の投稿では、LTVアプローチを使ってユーザーのエンゲージメントとリテンションについて掘り下げていく。

前回の投稿では、顧客が生涯(ユーザーである期間)でどれだけお金を払うのかを観察すること、LTVのトレンドを見るためにグラフを使うこと、この2点を学んだ。しかし、ユーザーを増やし、将来的にマネタイズを考えるスタートアップは、時間の経過と共にフォーカスがマネタイズからリテンションへと移行していく。例えば、企業Aがソーシャル・コンテンツ体験を提供するコンシューマ・アプリを提供しているならば、リテンションのグラフは図1のようになるだろう。


図1: ウィークリーのリテンションカーブ

図1の右側にある括弧の数値はコホートのサイズを示している。図1を見ると、このアプリのイニシャルユーザーのうち15-40%はアプリを使い始めて4週間経っても利用を続けていることが読み取れる。緑色の曲線で描かれた2014-03-03のコホートは他のコホートに比べてリテンション率が極めて悪く、全体的にも、時間の経過とともにリテンション率がどんどん低下している。図1はリテンション率の減少を明確に示しており、リテンション率の変動を直感的に理解することができる(コホートの数が多くなると図が見えにくくなるため、図1では6つのコホートしか示していない)。ここで、リテンション率低下のトレンドをより深く理解するために、ヒートマップを使ってトレンドを追いかけよう。


図2:リテンションヒートマップ

図2の1列目(cohort sizes)と2列目(first week)は、コホートのサイズとコホートの最初の週をそれぞれ示している。図2を詳しく見ていくと、2014-02-03のコホートの41%は利用開始から4週間後にアクティブであること、上側の楕円で囲まれたコホートは似たようなペースでリテンション率が低下しており、下側の楕円で囲まれた3つのコホートは他のコホートより著しくリテンション率が低くなっているといった事実を読み取ることができる。

1列目のコホートのサイズを見ると、2014-03-03で500人の新規ユーザーを獲得している。新規獲得ユーザーの数は他のコホートを大きく上回っているが、図1の緑色の曲線が示す通り、リテンション率は急降下している。これは、広告やキャンペーンを使って急激にユーザーを獲得したものの、これらのユーザーは他のユーザーに比べてリテンション率が劣ることを示している。企業Aはリテンション率が低いことを察知し、数週間後には広告やキャンペーンを中止した結果、それ以降は元のリテンション率に回帰している。

ヒートマップは時間の経過によって斜めに大きく広がっていき、カレンダー効果を観察・分析できるようになる。赤色の矢印で指定されたリテンション率を斜めに追っていくと、何らかの理由(アプリの不具合など)で2014-06-02のコホートのリテンション率が極めて低く、他のコホートもその影響を受けてリテンション率が急低下していることが分かる(幸いにも、リテンション率を低下させる原因が改善してからは元々のリテンション率に戻っている)。数年以上のデータをヒートマップで示せるようになれば、クリスマスや夏季休暇などのシーズン効果もヒートマップで表現できるようになる。

図1のリテンション曲線は前回の投稿で紹介したLTV曲線と似ているが、LTV曲線は累積の値を計算していたのに対して、リテンション曲線は増減後の値を計算している。言い換えると、収入の面では増減後の収益が、利用の面では増減後のリテンション率が計算されている。ウィークリーのリテンションは週間アクティブユーザー(WAU: Weekly Active User)を最大値として増加することになる。例えば、あるコホートは、1週間後に利用率が100%で2週間後に50%だとする。そうすると、LTV曲線の考え方に当てはめて、「最初の2週間では、このコホートは平均して1.5週間のリテンションがある」という表現になる。

下記のグラフは上記のリテンションカーブのデータを元にコホートごとの累積アクティブ時間(週)をLTVとして表したグラフである。

図3:週間アクティブユーザーの累積LTV

2014年の初週にサービスを使い始めた110のユーザーは6ヶ月後、累積平均で合計5.5週間アクティブタイムがあったということを示している。著しく他と離れている2014-03-03のコホートはリテンションが弱く、他のコホートと比べても累積アクティブ時間が圧倒的に低い。収益のケースと同様、これらのLTVカーブには4つの異なる性質を持ったカーブが存在する。

1. フラット
特定の日をすぎるとサービスへの訪問がそれ以降発生しないもの。

2. サブ線形
徐々にサービスに対する興味が薄れユーザーの訪問回数が時間の経過と共に減っていくもの。上記で紹介しているグラフはこれに当てはまる。

3. 線形
コホートのライフサイクルを通じて一定のリテンションを維持するもの。即ち、コアのユーザーはプロダクトを永久的に一定使用するものを意味する。傾斜はコホートがコアユーザーとノンコアユーザーの比率で上下する。

4. スーパー線形
時間の経過に伴いコホートのリテンションが増加していくもの。プロダクトを使用すればするほど使用する癖がついていくものがこれに当てはまる。


アクティビティベースのLTVは収益ベースのLTVと同じ要領でトレンドを分析することができる。


図4:週間アクティブユーザーの累積LTVのトレンド

前回同様、バーは週ごとのコホートのサイズを記している。約205〜のユーザーで構成されている2014-04-07のコホートに注目して欲しい。このコホートの1週目のWAU LTVは1を示している (i.e. 全てのユーザー1週目訪問でアクティブであるため)。初めての訪問から1ヶ月後、このコホートのアクティブ累積時間は2.7週となり、12週間の中でのアクティブ累計時間は約〜4.5週となっている。12週以降の数値はまだコホートが若いため測ることができない。このグラフでは有料広告がもたらした効果が一目でわかる。2014-03-03と2014-03-10のコホートサイズは他に比べて著しく大きくなっており、WAU LTVはこれに伴い大きく減少している。

改めて強調しておくと、エンゲイジメントベースのコンシューマービジネスでは、時間が経つほどリテンションが増加して新しいコホートのサイズが大きくなることが望ましい。言い換えると、我々は線形もしくはスーパー線形の累積LTVのグラフを好む(Daily, Weekly, Monthlyを問わず)。

図5:週間アクティブユーザーの累積LTVを示したヒートマップ

このグラフからは、2014-03-03と3014-03-10の異常に大きく低い累積LTVを記録している二つのコホートを除いて、サービス利用開始から4週間の時点で、全体で平均して2.3週間のアクティブウィークを有していることがわかる。累積アクティブウィークが増加するほど、赤色から黄色、黄色から緑色へと変化する。図2と図5は相互補完的な役割を果たしている。図2のリテンションヒートマップはユーザーのリテンションをリアルタイムで把握できる点で優れている。しかし、リテンション率の些細な違い(9-10%と8.5-10.5%など)を読み取ることが難しく、コホート間でのリテンションの実績を比べるのが難しい。
コホート間の累積LTVを比較すると、長いスパンで見て、些細なweek-to-weekリテンションの違いが大きな違いを発生させているか否かが分かる。累積を示したトレンドとヒートマップの欠点としては、短期間のリテンションの落ち込みの原因となる小さなことを観察することが難しいことである。言い換えれば、ある週にリテンションが落ち込んだとしても、長いスパンで見ると大きな影響を与えないのである。図5は典型例である。

その他のLTV : リファーラル

これまで説明したように、コホートとLTVのフレームワークは増減と累積の収益を理解するのに有益であり、リテンションの増減と累積にも応用が効く。このフレームワークはビジネスにおける顧客のどんな行動を理解するのにも利用できる。例えば、紹介(referral)のダイナミクスを理解したいとしよう。友人にシェアするユーザーを獲得しようとするアプリがあるとすれば、時系列でコホートのN週目の紹介LTVの増減と累積を分析することができる。図6は紹介LTVのトレンドを示したものである(データは図1から図5までに使用したものと同一であり、タイトルやラベル名を変更している)。

図6:リファーラルLTVのトレンド (紹介送信)

今回のLTVトレンドグラフは最初に紹介を送信した日を基準にしてコホートが形成されている。2014-04-07コホートは200人のユーザーが最初に紹介を送信し、平均してユーザーあたり4.5回の紹介を12週間で送っている。そして、ある週では400人以上のユーザーが紹介を送信しているが、その後は紹介数LTVが低下している。

このように、このアプローチは変化が小さいときの差異を長いスパンで蓄積可視化することができる。例えば、ユーザーの紹介送信による影響がdailyもしくはweeklyではほとんど変化をもたらさない場合、2つのグループで1ヶ月間の紹介送信による影響を比較すれば違いが顕著になる。また、紹介送信LTVカーブが伸びないグループと伸びるグループの間で、紹介送信が早い段階で実施されているか否かを理解するのにも役に立つ。

グロース・アカウンティングの枠組みと合わせて、この投稿で紹介したLTVの枠組みは企業精査プロセスのうちの量的監査の大部分を占めている。我々が最後に注目するのは顧客間の価値分配である。プロダクトを頻繁に利用する少数のコアユーザーとそうでない大半のユーザーが混ざったグループ、そして、大半のユーザーがそれなりにプロダクトを利用するグループ、どちらがより多くの価値をもたらすのが分からない。次回の投稿で顧客間の価値配分を説明する。

翻訳ソース記事 : 
https://medium.com/swlh/diligence-at-social-capital-part-4-cohorts-and-engagement-ltv-80b4fa7f8e41

目次
1. ユーザーグロースのためのアカウンティング
2. 収益グロースのためのアカウンティング
3. 実用的なコホート・LTV分析 (収益)
4. 実用的なコホート&LTV分析 (エンゲージメント)
5. エンゲージメントの深さと収益の質
6. エピローグ : エイトボールとスタートアップのための会計基準

GrowthfulというFACEBOOKグループにてスタートアップ向けにグロースに関するQ&Aやケーススタディを共有しています。ご気軽にご参加ください。 https://www.facebook.com/groups/1374331379323895/



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

10

Kazsa Tamai

Growthful

5つのマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。