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【人間心理】傲慢と善良 by 辻村 深月。自己評価の低さと自己愛の強さは同居しえる?

2022年10月くらいに購入して、人間心理の描写の言語化力が高すぎると圧倒され、それから辻村さんの著書を、何冊か読み漁ったきっかけとなった本。


あらすじ

主人公・西沢架は、いつも通り帰宅した自宅に、同棲中で家にいるはずの婚約者・坂庭真実がいないことに気付く。突如失踪した真実の手がかりを探すべく、架は真実の過去と向き合うこととなる。婚活・恋愛・ミステリー小説というよりは、人間心理を解像度高く描写した作品。

いくつか印象に残った部分をピックアップ

婚活における相手がピンとこないの正体は?

「ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です」 吸いこんだ息を、そのまま止めた。小野里を見る。彼女が続けた。 「値段、という言い方が悪ければ、点数と言い換えてもいいかもしれません。その人が無意識に自分はいくら、何点とつけた点数に見合う相手が来なければ、人は、〝ピンとこない〟と言います。──私の価値はこんなに低くない。もっと高い相手でなければ、私の値段とは釣り合わない」

「ささやかな幸せを望むだけ、と言いながら、皆さん、ご自分につけていらっしゃる値段は相当お高いですよ。ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにして見る、皆さんご自身の自己評価額なんです」

傲慢と善良

相手がピンとこないの正体と、傲慢と善良が同居するに関して描かれている部分は、基本的に同じ部分から来ている。

親や周囲から言われたこと・期待されていることを忠実に守って、善良に生きることで、自分の意思がなくなっていくので、他者評価依存になりがちで、それが故に、謙虚で自己評価が低くなってしまうのは分かる。

親も良かれと思って、子供に期待してしまい、子供は子供でとても敏感なので、親の反応をよく見ていて、「こういうふ風に行ったら親は喜ぶんだな」「こういう行動が喜ばれるんだな」と感じ取って迎合していく。しっかり思春期を経て自我を確立し、自分の意思で主体的に人生を選択する方向に舵取りできればこの問題は解決できるかもしれない。

ただ、謙虚で自己評価が低くなるだけで、終わることはないという点がミソである。

善良に生きた結果、減点をしない生き方になり、自分が傷つく選択はしないので、同時に自己愛は増大してしまうという奇妙な、ねじれ現象ともいうべき現象が発生してしまう。

続きは、こちらで記載しています。


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