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あいつはコカトリストウ

いつも信号待ちをしている交差点の角に、ぽつんと植物が生えている。そこは小さな花壇のような場所となっていて、季節ごとにいろいろな花が咲く。しかし誰が手入れしているか分からない(いつのまにか支柱が差してあったりするので手入れをする人はいるのだろう)うえ、園芸植物に混ざって雑草も賑やかにしている、いわば「半野良花壇」となっている場所だ。

そいつは最初ちいさく他の花々にまぎれていたが、日に日に背を伸ばし、いつのまにか私(身長170cm超)を見下ろすようになった。卵型の薄い葉っぱも1枚2枚と増えていった。
ひまわりかなあ。なんとなくそう思っていたのだが、早すぎる梅雨開けからしばらく経つと、太陽を借りてきたようなあの姿とは似ても似つかない花が咲いていた。

それがヘッダーの写真である。
深紅の手触りがよさそうなテクスチャ(なんとなく大劇場の座席っぽい)が、ぶ厚くぐにゃぐにゃとした花びら(?)に乗っかっている。
奴はひまわりではなく、おそらくケイトウの何かだろう。ただ、これまで私が知っていたケイトウはもっと小さくて、フサフサだったりクリクリだったりする愛らしい花を付けていた。一方のこいつは人間の大人ほどのサイズで太い茎の上に火炎のような花を付けている。こいつは鶏というよりコカトリスかもしれない。コカトリストウ。

とはいえ、この猛暑の中、しかも誰も水をやっている姿を見たことがない「半野良花壇」で堂々と咲き誇っている姿には感銘すら受けている。しかもかなり花の持ちが良いうえ、近くの株も同様ににょきにょきと背を伸ばしては花を咲かせている。
ここ最近はずっと猛暑日で、人間でさえ何をするにも一苦労だ。それでも奴はいつでもメラメラと花を揺らし、「おい人間、俺より良い栄養状態の癖にへばってやがるな」と挑発してくる。そんな姿を見て、おう、負けていられんな、と、私もストレッチをして仕事に向かう。そんな日が続いている。

半野良花壇の「主」として、今日もケイトウ、いやコカトリストウは信号待ちの人間を見つめている。

ケイトウってこんなにでかくなるんですか?

鶏を名に冠する君へ
君のその花びらの色をなびかせて獣と戦う国を知ってる

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