教員がうつ状態になるまでの記録2 飲んだ薬とセロトニンの話

 うつ状態と診断されて、お医者さんから処方された薬は、セロトニンの取り込みを選択的に阻害する薬だった。セロトニンというのは神経伝達物質といわれるやつで、脳のなかで分泌されたり回収されたりして、脳の働きに関係する物質。睡眠を取ると、この物質の分泌量が増えるとのことらしい。セロトニンが出て十分にはたらくと、脳の働きも改善されたり、健常に働いたりするらしい。
 この薬を使うと一度分泌されたセロトニンが回収されにくくなるそうで、セロトニン濃度が高い状態を維持できて、効果が持続しやすくなるそうだ。すぐに効く薬ではないそうで2週間くらいで効果がでてくるらしいのだけど、僕の場合はすぐに効果が出た。寝る前に飲むのだけれど、初めて飲んだ次の日から、心の安らぎが得られた。前にも記事にした「きちんとやらなければいけない」という脅迫観念がすごく薄まったのだ。恐怖感や憔悴感、切迫感も薄まった。
 これにはとても驚いた。なぜなら僕は、だいたいここ20年間くらいは、ずっと強迫観念や憔悴感、恐怖感、切迫感がある状態が日常の状態になっていたことに、これらの感覚が薄まってはじめて気づけたからだ。つらい状態が当たり前になりすぎていて、感覚が麻痺していた。「世の中で生きて行きづらい」と漠然とずっと感じていた原因は、ここにあったみたいだ。どうやら自分はもともとセロトニンの分泌が少ないか働きが弱いかで、他の人よりセロトニンによる恩恵を受けていないようだ。
 昔、研修会で見た動画を思い出した。セロトニンの分泌が多い親猿は、子供に対して関心を持って行動するのに対して、セロトニンの分泌が少ない親猿は子供に対して関心をあまり持たない行動をしていた動画だ。セロトニンの分泌が愛着などにも関連するようです、といった解説をしてくれていた。自分自身の他者への関心も、強迫観念についても、セロトニンのはたらき不足が関係していたのではないか。うつになって、薬を飲んでみて、そんなことを感じた。
 薬を飲んで2週間くらいになる。自分の他者への関わり方や、関心の持ち方が変化しているのを確かに感じる。うまく変化を説明できないのだが、人に対する恐怖心は、たしかに減った。なんとなく持っていた「他人はすべて敵である」という前提条件の気持ちが薄らいだように感じる。

 ※当方は、薬の知識や医学的な知識を正確に持ち合わせておりません。本文章における薬の効果等について、正確性を欠いているものと思ってください。

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