うまくやらなければ、という強迫観念

 

いつのころからかわからないけれど、「うまくやらなければいけない」という強迫観念が常に付きまとうようになっていた。

この精神状態が強迫観念である、と認識したのですら最近のことである。なにをやるにしても、誰かと話をするにしても、仕事をするにしても、スポーツをするにしても、常に「うまくやらなくては」と無意識に、しかも強烈に感じていた。
 毎日、へとへとだった。しかめっ面をしている、と身近な人によく言われた。そりゃそうだ。それだけ神経質になっていたら、1日生活するだけで、神経がすり減りまくる。
 睡眠時間は、毎日9時間から10時間は必要だった。それくらい寝ないと回復できなかった。それだけ寝ても回復しきれていなかった。
 「うまくやること」が最優先なのだから、なにをやっても基本的には楽しくない。「うまくやる」に意識を集中しているわけだから、他者に対して意識が向いていない。僕と一緒にいても、楽しいと感じるはずもない。カラオケとかやっても楽しめない。うまく歌わないと行けないから。集団スポーツなどもってのほかだ。うまくプレーしないといけないから、楽しめないどころかやりたくもない。
 僕は居合道をやっている。サイクリングも好きでやっている。どちらも一人でできるからだ。うまくできなくても大丈夫だからだ(もちろん道路交通法は遵守しているけど)。うまくできないといけない、という脅迫観念が一人でできるスポーツとかでは少ない。だから好きなのだろう。今にして思えば、この強迫観念がいろんな弊害をうんでいたのだなぁとしみじみ思う。
 でも、たまにうまくこの呪縛から開放されて、噛み合う時がある、というか開き直って行動できることがある。
 たとえば、婚活をしていたときの話なのだけど、最初はやっぱり「うまくやらなければ」に苛まれた。うまく会話をしなければ。うまく仲良くならなければ。うまくリードしなければ。うまくやることがすべてで、相手を見ている余裕がなかった。相手に関心を向けることができていなかった。だから当然、うまく行かなかった。2年くらいそんな状態を続けていて、ふと「結婚するのだから、ありのままの自然体で接してみよう。それでもダメならしょうがない。相手を見て、相手に関心を持ってみよう」と切り替えることができた。職場で参加した教員研修会で、生徒との関わり方でそんな内容を教わって、それを応用してみようという気持ちになったのだ。たまたま「うまくやらなければ」の呪縛から開放された。そしたらうまく行った。相性の良い方に出会えた縁もあり、その方とよい関係を築け結婚に至った。
 いま、うつ状態になり、薬を飲んで、治療をしている状態だけれど、仕事の面でもやっぱり「うまくやらなければ」の呪縛にずーっと囚われていたのだと思う。教員として教科指導をしているときは、とてもやりがいを感じていて、楽しい。この部分では「うまくやらなければ」の呪縛を解きほぐすことができているのだと思う。でも、教務部のたくさんの事務作業では「うまくやらなければ」という呪縛の中でずっと仕事をしていた。だからある時限界を迎えて、うつ状態になったのだと思う。
 これから少しずつ、自分をがんじがらめにしている「うまくやらなければ」の呪いを開放していく作業をしようと思う。うまくやらなけえれば、が減れば減るほど、楽しいことが増えて行くように今は感じている


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