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5月5日

今日は端午の節句。

今日はまん丸おにぎりを作らず、熱いほうじ茶だけを持って家を出た。


おはよう、トト。
扉を開けた。


店主は、カウンターで熱いほうじ茶をゆっくり飲んで、ひと息つくと、仕込みに入る。

〈本日のメニュー〉は
洋風ちまき
カツオのカルパッチョ
たけのこのジェノベーゼ和え

デザートに何故か和の柏餅。
柏餅は小さい頃からお気に入りの和菓子店で仕入れてきた。

飲み物はコーヒーか、ほうじ茶にした。

和洋折衷な日になっていた。
それでも洋食店は今日も営まれる。


洋風ちまきは、米ともち米、たけのこ、椎茸、にんじん、コンソメを入れて、炊飯する。
まん丸に丸めたら、笹の葉の上にちょこんと並べる。

たけのこはかんたんにジェノベーゼソースで和える。
ジェノベーゼソースは山椒の葉でつくる。
オリーブオイル、すりおろしニンニク、塩、パルメザンチーズ。
お気に入りの小鉢に入れる。

カツオのカルパッチョには、玉ねぎとしょうが、スプラウトをたっぷりと。

店主は、ちょっとワクワクしていた。
作り慣れたメニューじゃなくて、来た人が
きっと あれ? と思うだろうと
感じていたからだ。

思わなくてもいい。ただ、店主の中で今日は
子どもの日 ちょっとイベントの気分なだけ。
そんな日がちょっぴりうれしい。


11:00        オープンです。



12:00

背の小さめの、少しふっくらした、男性。

あ、どうも。

ゆっくりと扉を開けて入ってきた。


あ、いらっしゃいませ。どうぞ。

リラックスした、笑顔で店主はカウンターを勧める。


〈本日のメニュー〉は
洋風ちまき、
たけのこのジェノベーゼ和え、
カツオのカルパッチョ、です。

よかったら、熱いほうじ茶と一緒にどうですか?
いつもはお冷やたが、今日は熱いほうじ茶を先に進めた。

まだ、長袖が欲しい季節。
カルパッチョは身体を冷やすかもしれない。
店主はふと 思って、声をかけた。


それはうれしいな。
ありがとう。
いただくよ。


そう言って、男性は、ゆっくりと食べ始めた。


今日は和食かな?

その言葉に、店主は少し嬉しそうに、

ちょっと洋食なんです。
ちまきはコンソメで、
たけのこは、山椒の葉のジェノベーゼ、
カツオはカルパッチョにしてみたんです。

あ、食べくかったですか?

少しワクワクしている店主はいつもよりよく喋る。

そうか、これもいいです。
おいしいですよ。
おもしろい。


デザートでも、ほうじ茶を選び、ゆっくりゆっくりと男性は食べる。


お会計を済ませて、男性は今日もゆっくり扉を開けて帰って行った。今日も、


ありがとう、ごちそうさま。


と。


店主はにっこり顔で、自分へ、〈本日のメニュー〉を作った。
いつもより、ゆっくりゆっくり食べる。
最後は熱いほうじ茶で、、、
ほうじ茶の熱さがお腹をゆっくりとながれ、背中まで届く気がした。



(熱い ほうじ茶)

2022.2.20          カズ

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