見出し画像

夫の作りかけの家仕上げていきますシリーズ:とりあえず浴室

これ、ゆるゆるなんだけど

バスタブの上に付けられたシャワー用のハンドルを回しながら私は言った。

そんな扱い方をしちゃだめだ

そんな扱い方ってどゆことよ?

こういう角度で止めるんだ

バスタブの中に裸で立ったまま、夫ジェイと私のバトルが始まりかけていた。
もともとそのシャワーハンドルはなんとなく不安定で。

なんせジェイの手作りの家である。
たとえばシャワーカーテン。
そのレールはちょっとアンティーク調のメタルでバスタブの上を楕円に走る。

ちょっとかわいいかもと思ったはいいが入浴中にばさりと落ちた。そんなことがあったものだから、このバスルームの色々なパーツに信頼を置いていない私である。

そもそもシャワーハンドルをそっと動かさなくちゃいけないってどゆことよ?と思うのだが ジェイは真剣な顔で右ハンドルを7時の位置に左は8時の位置にそっと回して止める。

私はそのハンドルとタイルの向こうの水道管とのつながりの仕組みも知らないわけで。
仏頂面のままゆるゆるのハンドルをそっとまわす。

この微妙な角度・・・。

まだ床やバスタブの立ち上げのタイルも貼られていなかったころである。

結局このシャワーハンドルはゆるゆるのままジェイは亡くなった。
右側のハンドルなどはくるくる回してるうちついに水が出なくなった。

止まらないよりいいか

そんな状態だったのにそれに追い打ちをかけるかのように、この湖畔の家の間借り人Eが言ってきた。

バスタブの水栓が壊れた

私が東京に一時帰国していた時である。

やっぱり。
その水栓はちょっとアンティークなメタルと陶器のハンドルで。これもまたゆるっとなっていたのを、そーーっと回して使っていたのだ。

探したけどジェイが使ってたブランドが見つからない。

Eが立て続けにメッセージを送ってくる

とりあえず使えるように合うのを買って付けたけど、こっちに戻ったら好きなブランドを選んで。

んでカナダ湖畔の家に戻ってみると・・・

あのね~もう少し合うのなかったの?

私も水栓のブランドを探すが確かに同じのが見つからない。

困った・・・。

実はこの浴室まだ問題があって。
バスタブとトイレは使えるが手を洗う洗面台がない。

まだジェイが元気だったころ。
東京から戻ってきたら、そこにあった洗面台が忽然と姿を消し排水管がむき出しになっているではないか。

あの洗面台はオフィス横の洗面所に移動させたんだ。

あのね、ここで用を足したらどこで手を洗うわけ?

ジェイは知らん顔。
ジェイがこの浴室でのトイレの後、手を洗っていない疑惑である。

ぽっかり空いた場所にシンクがやってきたのはジェイが亡くなった翌年だったか。
道を渡ったところに住むローリーが、

シンクがないの?うちに古いのがあるよ。前住んでた人が置いてったの、うちでは使わないからあげるよ。

そんなわけで道の向こうからシンクを運んだ。陶器のシンクは結構な重さだ。

シンクを人からもらうって、今までにないけどこれからもないだろうなあ。
可笑しくなりながらエッサエッサと運んだ。

しかしである。
シンクがあっても管をつなげなければ使えない。

どうするよ?

仕事早く終わった日にやってあげるよ

間借り人のEが言ったがそれっきり忙しそうで顔を合わすときもない。

すべてはそのままになっていた。

時は流れ、ついに業者さんに頼むことにした。

自分でできるのになんで人に頼むんだ?
ジェイならそう言うが私にはできない。

浴室のシャワーハンドルの修理なんですけど・・
あとバスタブの水栓も・・・

電話をしてやってきたのはイラクから移住してきたデービッドをボスにあと二人の配管工たち。

ハンドルを変えるだけで終わるのかと思っていたら
ガガガガーッと音を立てる大作業が始まった。
見ると浴室の裏っ側の壁が大きく開いている。

ぐ、ぐわああん

ハ、ハーンこんな配管になっているのね。お湯と水のパイプ二つ

一日で済みそうだったのが二日がかりの作業となった。

after: ゴールドがないというのでシルバーに
二つあったシャワーハンドルはひとつに


たまたまシルバーのシャワーヘッドがあって
色合わせのため取り替えてもらった

いかついデービッドにシンクの話をすると いいよ、いいよ、やってやるよというので、シンクの方も配管を頼んだ。

ローリーんちの裏庭から運んだシンクが取り付けられた
手が洗える!

あの~もひとつついでに~
オフィスわきのトイレ、変な音がするんですけど見てもらえますぅ~?

こうなったら気になるところをみんな(笑)

中のバルブだけ交換するのも、トイレ丸ごと交換するのも同じような手間だというので、トイレを丸ごと交換してもらうことに。
というのも新品のトイレとタンクがもう一式置いてあったのだ。
(トイレの予備を常備してるお宅ってないでしょ~?(笑))

それはジェイが構想を練っていたジャパニーズスタイルの浴室に使うはずだったもので。

何をもってジャパニーズスタイルと考えていたのか?たぶん首までつかれる深い浴槽、そしてトイレはバスタブからは区切って引き戸のある個室。
それはメインベッドルームに繋げて作られる広い浴室のはずだった。

それを仕上げるつもりが私になかったので、使うはずのトイレ一式は不要のものとなりつつあったのだ。

そのやっと出番が見つかったトイレを取り付けるとデービッドが言った。
それも感嘆の声で。

so~ビューティフル!

何のことかと思ったらTOTOブランドのことだった。

これは高価でいいやつだ

そういえばこのあたりでTOTOのはあまり見かけないかもしれない。
あくまでジャパニーズスタイルにこだわったジェイ。

日本製はハイエンド(高級品)

そう言っていつも信頼を置いていた。

日本で当たり前のように使っていたTOTOのトイレが
この日はやけに輝いて見えた。

さてこれで浴室は仕上がり、と言いたいところだがそういうわけにはいかない。
天井は裸電球そして

用途不明な電気のワイヤー
ジェイはいったい何をしようと思っていたのか・・・・?

家づくりはまだまだ続く・・・・。



日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。