空とぼく。移りゆく、この世界で。
自転車に乗って、風をきる。
生ぬるい。
湯のような、布のような。
そんな風を浴びながら。
僕はふと、空を見上げた。
都会はやっぱり、星が見えない。
星空っていうものは地球の自転の影響で、
毎日、1度ずつ見せる姿を変えているらしい。
プラネタリウムをやってる友人が、
この前ぼくに教えてくれた。
本当は雲の上に満点の星空が広がっているのかもしれない。
けれど、いずれにせよ明る過ぎる都会の夜には星の光は見えない。
でも考え方次第では、年中変わらず同じ姿を見せてくれるヤツとも捉えられる。
移りゆくこの時代と、ヒトの感情。
様変わりするこの世界で、ひとつ変わらないものがあるということは、ぼくをそっと見守ってくれる存在みたいだ。
*
同じこの空を見上げ、
毎日絶望に打ちひしがれていたいつかのぼくを思い出す。
いつか、家もなく、お金もなく、途方に暮れた。仕事のストレスで身体が動かなくなってしまったこともあった。
もう、どうしようもなく、これからの人生に行き詰まったことが。
あの時も、
ぼくは同じ空を見上げていた。
*
でも、今日はなんだか違う。
同じ空をみているはずなのに、心はとても豊かで穏やかだ。
相応の人生を送り、ありのままの自分を愛せるようになったからか。
*
時を経て、移りゆくものと、変わらぬもの。
なんだか、素敵じゃないか。
そんなことを考えながら、
ぼくはまた次の場所に向かう。
いつかのように、
この生ぬるい風を浴びながら。
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