見出し画像

中森明菜「APPETITE」

「APPETITE」作詞:夏野芹子 作曲・編曲:U-ki

1997年2月21日発売のシングル曲。

同時期のヒット曲は、
安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」、Mr.Children「Everything(it's you)」、
相川七瀬「トラブルメイカー」、globe「FACE」、SMAP「ダイナマイト」、
ポケットビスケッツ「RED ANGEL」、河村隆一「I LOVE YOU」、
高橋洋子「魂のルフラン」等々。
アイドル、歌謡曲の勢いが完全に鳴りを潜め、チャートはまさにガラパゴス状態。
一番J-POPS界が盛り上がっていた時代だ。

その中で、目に見えてチャートにはもう上ってこなくなったものの、
中森明菜というシンガーは、この時代でも挑戦し続けていた。
なにしろ、この楽曲の主人公は、亜熱帯植物「ベンジャミン」。
飼育主の男を食べてしまいたい位に愛してしまった、という設定だ。
「ベンジャミン」=「三角関係の中の女性」?
そんな個人的想像もあったりするが、
やはり、これは、植物ベンジャミンなのである。

U-ki氏の猥雑で暑苦しく、セクシーなアレンジに応えるように、
夏野氏のこれまた女性らしい艶のある、「ベンジャミン」=「?」といった想像を掻き立てる詩を、
中森明菜その人は、ベンジャミンになり切って、
幹の突然変異のうねりを思わせるフェロモンを出しまくりながら、
独特の中低音での歌唱を、余裕で披露している。

エロティシズム満載ながら、決して下品にならないのが、
天性のシンガー、中森明菜だからこそ、なせる技なのだ。
あの悲劇的で消え入りそうな「難破船」を歌う人は、
こんな歌も普通に自分の歌として消化し、披露できるのだ。
あらゆる側面から「女性」を歌い尽くせる、
現役では数少ない、唯一無二の存在と、
言い過ぎと言われようが言ってしまおう。

セールス的には全くもってヒットと言えるには程遠いが、
間違いなく、中森明菜の魅力が十二分に発揮されている、
彼女の90年代での一番のハマり曲だ。
スルメ曲であるだけに、埋もれているのがもったいない、痛快な名曲。
アルバム「SHAKER」、また「Akina Nakamori 90's BEST」に
収録されているので、レンタル等で是非聴いてみていただきたい。

なおこの曲は、知名度が低すぎる問題があるものの、
女性やニューハーフの方々が、カラオケで適当に振りをつけて踊りながら、色っぽく上手く歌えば、
とても盛り上がるタイプの曲だ。
音域もそこまで広くないので、歌いやすい方の曲だろう。
ただ、あまり調子こいて踊り過ぎて、
息がゼイゼイして歌えない、なんてことのないように。

(※この文章は、作者本人が運営していたSSブログ(So-netブログ)から転記したものです。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?