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手段となる組織から目的となる組織へ

「手段の目的化をいかに回避するか?」

これはあらゆる問題解決の場面においても言われてきたことです。

実際、支援の現場でもこの視点で対話をし、常に本質に立ち返りながら施策を打つことを進めてきました。今もなお大事にしている観点です。

しかし、最近ふと思ったことがあります。

それは、「手段の目的化」が問題となるのは、思考することを手放し目の前の手段を闇雲に続けることを習慣化しているときであり、思考した結果手段そのものに目的を付することが出てくることがあるのではないかということ。

つまり、手段を目的へと昇華したときに見えてくるものがあるような気がしています。

組織を作るという行為は、しばしば手段として捉えられがちで、多くの場合特定の目標や目的を達成するための方法として組織は存在します。

しかし、私たちは「なぜ組織をつくるのか」という根本的なことを問うことを忘れてはいないでしょうか。もしかすると当たり前過ぎて問うようなものではなかったかもしれません。

これまでも私自身組織が手段としての役割を果たしてきたことには何ら疑いはありませんでしたが、もしかするとその視点自体が変わるべき時が来ているのかもしれません。

かつて米国の経営史学者であったアルフレッド・チャンドラーは、「組織は戦略に従う」と述べました。

これは組織の構造がその戦略の実現を支援し促進するという考え方であり、言い換えれば戦略が明確にならなければ必要な組織の構造は定義できないというものです。しかし、この考え方にも限界があるかもしれません。

たとえば、意図せずとも作られた組織そのものが戦略を形成し、方向性を決定する可能性を秘めているとしたらどうでしょうか

ジム・コリンズはその著書であるビジョナリーカンパニーで「誰をバスに乗せるか」という組織のあり方を説いています。

「偉大な企業への飛躍をもたらした経営者は、まずはじめにバスの目的地を決め、次に旅を共にする人々を乗せる方法を取ったのではない。まずはじめに適切な人をバスに乗せ、不適切な人を降ろし、その後にどこに向かうかを決めている。」

ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則

先述の通り多くの会社では目標や戦略、ビジネスモデルなどを最初に決め、その実行に必要な人材を採用します。

しかし、ジム・コリンズは成功を収めた企業に倣い、まず最初に適切な人を採用し、その後に目標、戦略、ビジネスモデルを決めるべきと主張したのです。

採用分野には「教育で採用を超えられない」という金言があります。

採用において最も重要なこととは間違った人を取らないことであり、そもそも人材育成によって伸びる人を入れられなければ、すべて無駄になるというもの。ここは人材領域の経験がある方の多くが同意してくださるはず。

敢えて指摘することでもありませんが、組織の成果はメンバーの質、チームワークの質によって大きく左右されるのです。
(ここでいう質を何と捉えるかは今回は言及を控えます)

この観点から見ると、組織をつくる目的は単なる目標達成のための手段を超え、より良い仲間と共に新たな可能性を切り拓くことでもあるといえそうです。

ましてや時代はVUCA。予測不能な将来において柔軟かつ効果的に対応できる組織には、長期的な計画や戦略よりも、変化そのものを楽しめて、ピンチをチャンスとも捉えられるような仲間が必要ではないでしょうか。

私自身新たにメンバー採用に臨むあたり、よい仲間を迎えることで見える景色に賭けることが、自身と組織を変化成長させる鍵になるかもしれないと感じています。

組織は単に個々のスキルや能力を集約する場ではなく、共有されたビジョンと目標を追求するための共同体。そして共同体と呼べるような仲間たちと出会えたならば、きっと想定しなかった素晴らしいものとの出会いが待っているはず。

「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」
(If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.)というアフリカの諺もありますが、よい組織は私たちの想定を超え、時に戦略をも凌駕するものです。

皆さんがつくりたい組織は手段としての組織ですか。それとも目的としての組織ですか。

数多あるnoteのなか、お読みいただきありがとうございました。いただいたご支援を糧に、皆さんの生き方や働き方を見直すヒントになるような記事を書いていきたいと思います。