エンジニアが採用できる組織をつくるための基礎知識が学べる書籍の紹介

こんにちは、HR TechスタートアップでHRBP(Human Resources Business Partner)をやっています。

前回のnote(エンジニア採用が変化してますよ。という話)を読んでいただいたみなさま、ありがとうございました。シェアして頂いたおかげで経営者・人事の方々にも読んで頂けたようです。重ねて感謝申し上げます。

今回は続編として「エンジニアが採用できる組織をつくるための基礎知識」というテーマを扱います。少々マニアックになるので読みやすくはないかもしれません。

エンジニアのチーム作りで有名なTeamGeekに書かれているような「HRT(Humility, Respect, Trust)」がなぜ大切なのか、Googleの「心理的安全性」のあるチームがなぜパフォーマンスがでるのか、といった事例を理解するための助けとなる、組織心理学の基礎知識と実践のサンプルが得られる書籍を紹介していきたいと思います。

今回の概要

前回の記事で、エンジニアが採用できる会社は

1, 従業員から信頼される経営者がいる
2, パフォーマンスを気持ちよく発揮できる組織である
3, ビジネスが有望である

を兼ね備える会社だと説明しました。

今回は 2, をテーマに導入としておすすめの書籍を3冊紹介します。

1冊目は仕事するにも学習するにも不可欠な、人間のガソリンとも言うべき個人のモチベーションを理解するための本です。2冊目は不確実性の高い時代における組織づくりに関する本です。3冊目は1冊目2冊目の妥当性が認識できる実践の本です。

どれも著名な本ばかりなのですでに読まれた方もいるかもしれません。アフィリエイトは張ってないのでどなた様もどうぞ。



1, 人を伸ばす力

Edward L. Deci, (1999)

Rochester 大学 Edward L. Deci 教授による内発的動機づけと自律に関する書籍。デシ教授は内発的動機づけ研究の第一人者と言われる研究者です。

ふつうの経営者は従業員に「やる気」を出してほしい。ならばどうすれば「やる気」が出るのか学ぶべきです。すごく単純な話ですが。その「やる気の仕組み」がこの本には書かれています。

人間のパフォーマンスが最も発揮されるときとはどんな時でしょうか。エンジニアの方であれば「めちゃくちゃ気分が乗ってきて、周囲の音が気にならなくなり、頭が冴え、演奏家のようにタイピングが止まらなくなり、気が付いたら数時間が経っていた。」という経験があるかもしれません。

これはClaremont大学院大学 Mihaly Csikszentmihalyi 教授の言う「フロー」状態と言い、黒バスでいうと「ゾーン」に入っている状態です。

この状態に入るためには「熱中できる野心的な目的」のために「自らのスキルの限界に近い要求」がされる必要がある、とチクセントミハイは言います。フロー状態になるためにはその状況に内発的な動機付けによって向き合う必要があり、内発的動機づけを高めるためには「有能感」と「自律性」、「関係性」が重要である、と本書においてデシは述べています。

さらに従来のマネジメントでは当たり前だった、管理監督や威圧、競争、評価、報酬といった仕組みによって「統制」されていると感じた場合には内発的動機づけは抑制されることも調査されています。経営者の直感とは反対であろう、インセンティブが逆効果になる可能性についても指摘されています。

また、「関係性」に関しては、その集団における価値や規範を自らのものとする「内在化」というプロセスにおける、取り入れ(Introjection)・統合(Integration)という観点からみると組織エンゲージメントのヒントにもなると思います。

例えば、退職者が増えたときに「ビジョンの共感と団結が足りないからだ!」とカルチャー浸透担当を設定したり、毎朝バリューを読み上げたり、全員参加の飲み会を設定したりすると、それは「統制」と感じられ取り入れ状態になるため、より人心は離れていくことになります。カルチャーの浸透が足りないのではなく、経営者に対する信頼が足りてないだけです。

自律性と統制については、この有名なTEDの動画も参考になります。

書籍の内容は、要約だけでは正確に把握できないと思いますので、ゆっくりと理解しながら読み進めることをお勧めします。



2, 学習する組織

Peter Michael Senge (2011)

マサチューセッツ工科大学スローン経営学大学院 Peter Michael Senge 上級講師による「学習する組織」について書かれた書籍です。彼の「The Fifth Discipline」はHarvard Business Reviewの過去75年における最も優れた経営書の1つであると評価されています。

昨今の、VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)とも言われる不確実性の高い社会において、どんなに優秀な経営者であっても5年後10年後の未来を正確に予測することは不可能となりました。

「学習する組織」は予測できない未来に勝つための組織です。予測できない理由は情報が大量でしかも相互に関係しながら変化するからで、「複雑系(complex system)」である同一のインプットを行ってもアウトプットが毎回少しづつ変わっていく世の中を相手にしているためです。

この市場において勝つためには、社会の変化に対して組織自体が適応し、目的地にたどりつく必要があります。学習する組織は、組織自体をシステム思考によって統合させることで、あらゆるレイヤーにおいて学習し続けることで組織自身を環境に適応させ、自律的に最適のアクションを実施することでゴールに辿り着くアプローチです。寄生獣の後藤みたいな。

目的の共通性を見出し、メンバーの間に存在する非一貫性を詳らかにし、メンバーひとりひとりが公正で意義あるシステムの一部であると自覚できる状況を実現するためにシステムを用いていきます。

そのなかで、個人的に重要であると感じているのは「ダイアログ(対話)」です。新しいメンバーも古いメンバーも、目立つ人もそうでない人も組織としての断絶を生まないために、誰もがその組織に集まった意義を確認しながらひとつのシステムとして機能するためのプロセスです。

また、実務的なアプローチという意味では、仮説が当たることはもちろん良いのですが、VUCAでは当たらないことが普通なので、重要なのは良い失敗(エラーメッセージ)から学ぶことという事になります。良い失敗は、非難ではなく称賛されなくてはなりません。

失敗してはいけない、失敗したら叱責されたり、陰口をたたかれたりするような職場の雰囲気があれば、心理的安全性に欠けています。(なにかをする際に、無知, 無能, 余計な事をいうと邪魔者扱いされる, ネガティブと思われるかもしれないと心配が生まれる職場は心理的安全性不足です。)

こうした学習する組織づくりとは、トップダウン型の組織からシステムによる現場自律型の組織への転換を意味します。経営者の号令に従う「ウォーターフォール開発」から、経営者がデザインする「アジャイル開発」に組織を変えるイメージが近いかもしれません。

本書では5つのディシプリンによって、内発的動機づけを引き出し、チームとして方向性を揃え、心理的安全性を確保し、良い失敗を称賛して学習し、ダイアログを通じて変化に適合し続ける組織に迫る道筋を示しています。

単純に名著なので、ハーバードビジネススクール Amy C. Edmondson 教授の「チームが機能するとはどういうことか」と合わせて読んでいただきたい一冊です。



3, ワーク・ルールズ!

Laszlo Bock (2015)

言わずと知れた、Googleの働き方について詳細に記した書籍です。Googleの人事責任者を務めていたラズロ・ボック氏によって書かれています。

先の2冊を読んだうえで、ワーク・ルールズ!を読むと、それまでと全く違った視点で読み解くことができます。

Googleは健康的で無料の食堂であったり、美しくユニークなオフィス、良い待遇がフォーカスされますが、それは Frederick Herzberg の言う衛生要因に過ぎず内発的な動機づけを支援するための重要なものではありません

実際に、2017年10月にラスベガスで行われた「HR Technology Conference 2017」で基調講演を行ったラズロ・ボック氏はこのように述べています。

多くの企業が間違えがちな、イノベーションを生むための環境づくり。ラズロ氏は成功への道筋を「6つの簡単なステップ」として解説しました。
1, 人々を、取り組む価値あるミッションとつなぎ合わせる
2, 人々の内面的なモチベーションに働きかける
3, 恐怖心を取り除き、心理的安全性を向上させる
4, 成功確率の低い野心的プロジェクトと、それほど野心的ではないが、成功確率が高く、重要なプロジェクトのポートフォリオを作る
5, 「敵」は誰かを意識する
6, 幸運を呼び寄せる。そしてカジュアルな衝突を促す

Googleでは強力な方針(10の事実)や意義あるミッションに基づいて、自分たちらしい振る舞いのもとチームの方向性をそろえ、内発的動機づけを促進し、心理的安全性を確保し、常に変化しづけているのが伺えると思います。

充実した福利厚生やトラブルが起きた時のサポートは、Googleに所属するメンバーが安心してパフォーマンスを出すことに集中できるようにするための組織内における社会保障的な仕組みです。

ここから学べることは、例えあまり資金的な余裕のないスタートアップだったとしても、できる限り安心して働ける環境や制度でサポートをすることは可能だという事です。大切なことは掛けた金額ではなく、従業員が集中してコトに向き合えるように心から寄り添う事ではないでしょうか。一方で、スタートアップだからといって不当に安い待遇はタブーです。アンフェアは組織を腐らせます。経営者の我が身可愛さが優先される組織は、公正さや信頼が損なわれ、内発的動機づけや心理的安全性が阻害されるためパフォーマンスが出しづらい組織になるでしょう。おそらく優秀な人から率先して逃げていくことになるはずです。

1冊目、2冊目を読んだあとであれば、Googleの施策の意図が理解できるはずです。その意図を読み取ったうえで自社に合わせた制度や仕組みを作ることも可能だと思いますよ。

まとめ

この3冊を読んで頂ければ「気持ちよくパフォーマンスが発揮できる組織づくり」のイメージがふんわりとつくんじゃないかなと思います。Googleがなぜワーク・ルールズ!の様な施策を行っているのか、メルカリがなぜGo Boldをあれほど内外に浸透させているのか、中国のWechatPay(微信支付)が指針としてFair, Open, Independentを大切にしているのか、理由が少し見えてくるのではないでしょうか。

願わくば、HRに興味をもっていただき、個人とチームのパフォーマンスを最大化させ、従業員が良い時間を過ごしながらビジネスに勝つことを目指す経営者や人事が増えてくれることを望んでいます。

それと、エンジニアが採用できるような組織をつくるためには、エンジニア以外も含め全員が気持ちよくパフォーマンスを発揮できる組織にすることが必要です。あらゆる職種に対して言及していないのは、エンジニアの文化は公正さという観点に親和性があると感じているので、エンジニア主体の会社から広げていったほうが早いかなぁと思っているためです。

研究に基づいた良い組織を増やし、ブラック企業を潰していきましょう。

こちらからは以上です。

Photo by alex-shutin, javier-allegue, casey-horner on Unsplash


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Kazuhiro Chida

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