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はじめての資金繰り表

資金繰り表という言葉は聞いたことがある方は結構いると思いますが、実際にそれが何のためにあるか、どう見ればいいかイメージつかない人もまた結構いらっしゃるのではないでしょうか。

本日は、プロジェクトや現場で「資金繰り表を見ておいて、分析しておいて」と言われた際何をどのように見ればいいのかを書きたいと思います。

楽観的な資金繰り表は作る意味なし

資金繰り表の一番の意味は「ある期間までキャッシュが回るのか?」を確認するためのものになります。

会社はキャッシュがなくなると潰れてしまうため、年度比較でキャッシュが増加していても日次単位でキャッシュ残高がマイナスだとアウトです。

資金繰り表で大事なのは未来予測ではなく、リスクが起きた時の備えを検討することです。
なので資金繰り表は「リスクケース」で見ないと意味がありません

こんだけ売上が上がりそうだから心配ご無用!というより、保守的にみるとXヶ月後に現預金残高が大幅に減少する可能性があるため、「この投資は控えて置こう・後ろにずらそう」、「金融機関から調達しよう」という話をしていきます。

資金繰り表は月次が一般的ですが、本当に会社の状況がやばいと週次や日次で作成したりします。

資金繰り表が数字の羅列とならないために

「資金繰り表を見ておいて」には、正しいか確認しておいて、なぜそうなるか要因を把握しておいて、その上でどうすればいいのか対応策を検討しておいてまでを含むと考えております。

資金繰り表の分析のポイントは以前決算書で書いた通り、自分の中での予測(仮説)値と比較し、おかしいところを確認していくのがベストです。

慣れて来ると対象事業の理解と一定のヒアリングでどんな資金繰りになるのか想像できたりします。
ただ最初だと誰もそんな感覚も持てないため、以下の視点から分析をすると理解が深まると思います。

①PL比較
「収益・費用=収入・支出」、「利益=キャッシュ」とした場合に何が違うのか?
これは資金繰り表の年間合計の項目とPL項目を比較し、その要因を確認します
例えば資金繰りの営業収入は売掛金回収+受取利息の入金+雑収入の入金とかで構成されています。なので対応するPLは売上高+営業外収益になります。
そのため基本的には①(売上高+営業外収益)×消費税+②売掛金・未収入金期首残高ー③売掛金・未収入金期末残高と概ね整合するはずです。

※PLに消費税は表現されないため、注意が必要

また資金繰りの人件費は①PLの原価・販管費の人件費ー②未払費用期首残高+③未払費用期末残高と整合しますし、
資金繰りの経費は①原価・販管費の人件費以外の項目×消費税ー②未払費用期首残高+③未払費用期末残高+④営業外費用-⑤減価償却費と概ね整合するはずです。

このようにまず誰もがわかるPLとの比較から資金繰りがどのように計算されているか把握するのが一番全体像が掴みやすいです。

これらの差異を確認していくこと、前期の債権・債務の回収・支払が考慮されていない、支出をかなり多めに見込んでいる、昨年の数字のまま更新されていない、大口の入金が漏れている、大口案件で特殊な回収・支払条件があると言うことがわかります。

②過去比較
過去のトレンド=今期も起こるトレンドとした場合何が違うのか?
これは過去の月次資金繰り実績と資金繰り予測を比較して収入・支出のタイミングを確認するために実施します

例えば、補助金の入金タイミング、税金・賞与の支払タイミング、SaaSの年間契約の支払タイミングとそれぞれの企業で現金の入りと出のタイミングには特徴があります。

冒頭説明した通り、究極的には日次単位で現金残高がマイナスとなるとアウトなので、現預金が減りやすいタイミング(事業の季節要因で売上が少ないタイミングや、支払が集中するタイミング)の把握はマストになります。

これを月次均等按分とかにする場合は資金繰りを作る意味はほぼありません。なので過去の収支トレンドが反映されているか確認し、トレンドが反映されていない場合はなぜかを深掘りします。

また同時に現預金が減りやすいタイミングをうまく分散できないかを検討します。(局所的に現預金が減る金額が、最低限保持しておかない現預金残高増加につながるため)

③予実比較
会社の予想=実績と前提を置いた場合何が違うのか?
これは対象会社の資金繰りの作成能力・資金繰りの予測しやすさを検証するために実施します。

会社によってはかなり精緻に資金繰りを実施しているところもあれば、かなり大雑把に作っていることもあります。
資金繰り表は現金の流れを取扱っているため、それが正とされることが多いですが、当然予測を含むので作り方次第では全然精度が異なります。

なので過去の予実を入手し、予実差異が起こるポイント及び、その理由、資金繰り予測における改善策が組まれているか確認します。

場合によっては会社の提出された資金繰り表は適当すぎるため、自ら作り直す、会社に作りなおしてもらう等の対応が必要になります。

ここで多いのが、回収期間とかのアップデートをしていない、大型な特徴事実の入出金を考慮していない、予測PLの売上高と違う売上高を使用してる、とある雑収入が毎期抜けている、支出についてバッファーを見込みすぎているとかが、あるあるでした。

④CF比較
CF計算書=資金繰り表とした場合何が違うのか?
これはおまけ的な位置づけで、対象会社がキャッシュフロー計算書を作成している場合、こちらの数字を利用してPL比較と同様何が違うのか確認します。(特に投資CF、財務CFとかも)

⑤バッファの確認
最後に資金繰りに窮した場合の資金調達手段(実行までの期間含む)を確認しておきます。
例えば、現在の現預金残高に余裕がある(月次支出の2-3カ月分は欲しいかも)、未使用の当座貸越枠がある、担保外の不動産がある、すぐに換金可能な資産がある、親会社からの援助を受けられ等です。
このバッファーの金額とリスク時の必要資金額を比べてバッファーの方が多ければ問題ないということになります。現預金残高がかなりギリギリとなるのケースがあれば、新規借入を行う、ある投資について自己資金から借入に変更する等を検討します。

また今度書きたいと思いますが、上記資金繰りで必要となる資金用途(賞与の支払なのか、運転資本の季節的要因か、設備投資資金か、借入金の返済資金)ごとの最適な資金調達の方法を検討するのが財務戦略の一つである資金調達戦略になります。

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