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EIGHT BEAT詩で詠美史 / Album『C3』Base Ball Bear

うつくしいだけではないはずだけど、歴史を詠ったABCにぎゅっとさせられたアルバム。

"C"シリーズ第三弾

AでもないCでもない(「その狭間でモヤモヤした」!)Bを冠する彼らが大切にする「3」番目のアルファベット。C、C2とリリースしてきて、満を持したC3。she, sea, 死、詩、詞。様々なCを描いてきた彼らが今回織り成したのは「史」なのかなと思っている。(史織ちゃん!)

通して聴いてみれば多用される「」と「」に気づく。穴はCという文字にも開いていて、一度はサポートを迎えて埋めようとしてみた彼らが落ち着いた結論は"街と海と私の三角関係 三部作くらいじゃ終わりそうもない"!
実際、インスタライブでも「弓木(英梨乃/KIRINJI)さんを迎えた」パラレルワールドが小出氏の中にあったことも言及していて、それはそれで素敵だったのだろうけど、いまの3人の形を選んでくれたことを嬉しく愛しく想う。

そして繰り返される「秋」のモチーフ、溶かされゆく「夏」もまた一つのキーワード。EPで何故こんなに秋らしさを強調してくるのかと不思議だったのだけど、単なるリリースの季節じゃなく、バンドのフェーズとしての"豊穣の季節"だったのかと思うと…良い葡萄が実ったなと🍇

ジャケ写のアートワークも『Grape』で"金字塔"をひっくり返し、『ポラリス』で「これは『結んだ先』の星座だったのか…」と思わせて、からのC3。これもまた三部作なのだけど、終わりそうもないと言い切ってくれるから、未来に希望が持てる。最初こそ「新曲少ない…?」とか思ったけど、シングル曲をリード曲にしてカップリング曲の存在が薄まるようなアルバム作りが主流の中、優劣をつけず全て入れた、という流れにまた「史」を感じて…。

揺らぎ試されて始まる本作は、ポラリスという「不動の星」を見つけ(或いはそれに成り)、それを拠り所に各地へ風来坊のように訪れ続けていくのだと、これからの「史」も期待させるもの。

Bを3つ並べた3ピースバンドはこれからも続く、
To "B"e "C"ontinuedと受け取らせて頂きました。

全曲感想:青い夏の穴を埋め、迎える秋は豊穣の季節

※言葉のことを追って書いたら音楽的なことまで書く容量なくなりました…😇

01_試される(2020 ver.)
余韻を増幅させるアウトロがライブを想起させる2020ver.!
舞台は金田一少年の事件簿🕵️‍♂️
"揺らいで試される"所から始まるアルバム。

02_いまは僕の目を見て(C3 mix)
"言葉は穴のあいた 軽い砂袋さ"
砂ではなく砂袋の方なのかと、言葉に沢山の意味を持たせてきたであろう彼の言い回しに想う。
"10月に"詠うのは彼らの現在地。
"これまで生きてきたこと 僕を形作ってきたことも
わからなくたっていいから いまは僕の目を見て"

03_Flame(C3 mix)
このテンションの「Birthday」の目新しさ。単なるバースデーソングではなく、生まれ変わらなければいけなかった彼らの人生譚。
flame=[炎]。残火(のこりび)を、吹き消すのではなく、育てようという決意。その中でも、
"忘れられないかなしみを 引き連れてく"
チラつく影を捨て去る事なく。
MVは映画『赤色彗星俱楽部』の武井佑吏監督による作品。

04_Summer Melt(C3 mix)
EPの中では恋の歌として聴いていたので、一番刺さったフレーズは、
"君に教えてもらったことだって 僕の知識として育ってく
君もそうかなってチクっとする"
とかだったんだけど、この位置に置かれることで、居なくなった彼(と過ごした夏)を想いながらも初秋を予感させる歌になった…。
"さよならも上手に出来なくて 最初から違ったと思いたい
幸せだった瞬間(とき)があふれる"
"眩しい想像こびりついてる
忘れなきゃいけないとわかってる
「カラン」と音が響いた 秋の始まり

05_L.I.L
ルーズリーフとは「綴じるためのが開いたノート用紙」。
色んな意味があるので「LIVE IN LIVE」と決めきらずイニシャルにしたというタイトル。
Life, Loose-leaf paper, Listen, Love ...
"ルーズリーフに書きなぐってた 作文みたいな詩(ポエム)
あの続きをまだ詠んでる 夜から夜を越え"
青い心のメロディー画"

06_EIGHT BEAT詩
エイトビート・し、AとBとC(歌う時はABC)、今までのバンド史をリアルなフレーズも織り込みながら詠うラップ。音は関根嬢のチャップマン・スティックとほりくんのドラムだけで、小出氏はギターを弾いてないそう。ライブの時はハンドマイクなのかな?
自己紹介ラップってアイドルに最近よくある(先駆けは嵐なんじゃないかと思っている)のだけど、それをバンドがやってるのが小気味良い。
ライトに書いた(大意)からこんなに反応あると思わなかったとインスタライブで言ってた小出氏。私も正直アイドルで耐性ついてたからそこまでは驚かなかったけど、ベボベの詩的な詞からすると相当むき出しで新鮮だよね。
豊穣の季節=秋なのだとしたら、Grapeからの美しい流れ。3人で迎える、3つ目の季節。エイトビートに乗せた詩、美しい(だけではない)歴史を詠う彼らに敬意を込めて。

07_セプテンバー・ステップス(C3 mix)
セプテンバーと言いながら歌詞には7・8月と10・11月しか出てこない。"永遠 遠 遠の7・8月"に対して"すぐやってってっ来る 10・11月"…。
いつだってベボベの、アルバム内のシングル(この場合はEP曲)の置かれ方に舌を巻いてしまう。単独で成り立っていたものを流れの中に据えて意味を持たせるのが巧すぎる。
青空が 爽やか さみしい"に対比されるのは"幸せは 君の色"…。

08_PARK(C3 mix)
The Cutあたりから社会性を帯びた歌詞が増えてきたと思っていて。ラップとの相性もあるのかもしれないけど、詩的な物語から現実的な詞へシフトチェンジしたのは転機のひとつだったのかなと。所謂「青春バンド」から脱した時。
すぎる空"と、なみだってる未来。まだすこし揺らいでる。

09_Grape Juice(C3 mix)
掛け違えたボタンの"から向こう岸確認"。
前作EP「Grape」で聴いた時は本気で「歌詞どうしたんですか?」って思ったんだけど、意味のなさを目指して書いたと知れてよかった。「ごくごく」に本気で焦った。笑
それを"意味がないその中で 意味のある圧倒的見つめる"って回収するんだから、好きで居るしかないんです。

10_ポラリス(C3 mix)
"街と海と私の三角関係 三部作くらいじゃ終わりそうもない"
EP『ポラリス』で聴いた時は本当に泣きそうになった。まさかのほりくんが歌ったと思えば3人でハモリ出して、"また掴みたいな 君のハート"にぐっときてしまって。彼らの新しい旅立ちの決意を感じた。EPが出ていなかったら、この曲がC3の最後に据えられた未来もあったのかな、とか。
AとBとCの点を結んだポラリスが輝くのは"『EIGHT BEAT詩』の天"!それは日中の青空ではなく、澄んだ星空。ポラリス=北極星は地球から見ればほぼ「不動の星」。確固たる3人で輝き続けると信じさせてくれる。
"ギタードラムベース 輝くフレーズ 結んだ先にポラリス
One&Two&Threeで ~180度の可能性 篇〜"

11_Cross Words
"埋められない空欄(あな)は今じゃなくても いいんだよ すべてがヒントさ"
丁寧に紡ぐ愛おしさ。フィクションの恋を描いてきたイメージが強いけど、大切にした事がある人の言葉だから沁みる。想えば『short hair』という曲では"大切なものだけが大切ならいいのに"なんて爆死フレーズ(個人的に)を叩き出していた人でした。
"水をつぐように僕の名前を呼んでほしい"とは、飲みたいからという「息をする」より意識的な行動だというインスタライブでのお話が沁みた。一方僕は"息をするように君の名前を呼びたい"訳で、こちらはもう自然な動作になってるという。

12_風来
こんな気持ちで自分の街へ奏でに来てくれたらファン冥利に尽きるというもの。そして逢いに行く時の気持ちもまた同じで在りたくなる。
"光と命がおどる当然"、Light in LiveというL.I.Lを最後に見つけた気持ち。
"「血のめぐりを固めないためには『同じ姿勢でいないこと』」
湯に浸かり 次の旅 思うよ"
最後まで吹いている"青い風"はきっと彼らの背中を押してくれる。

Base Ball Bearというバンドと私のこと

格好つけないという格好のつけ方が、ワンマンじゃなく「三点倒立」の素敵なバランスになってきたと新作の度に想わされるこの頃。

私は2017年の日比谷野音当時、あの大所帯を受け入れられなくて、このままならもうライブ行かないかなと真剣に思っていたのだけど、18年春の仙台darwin(奇しくも湯浅氏が失踪して初めて演った会場)での2年ぶりのライブで「3人でも素敵だな」と思えて、そこから彼らを諦めることなく聴いてきた。自主レーベルになり環境も変わったけど、あの野音の絶妙な違和感をマテリアルクラブや他の活動で続けてくれればどちらも素敵な形で成り立つ、関根嬢のチャップマン・スティックとsticoだって、ほりくんのサポートドラムだって素敵だ、3人がBase Ball Bearでありながら他の活動をすることを好ましく受け入れられるようになった。それがきっとベボベに還ってくると思えるから。

好きになった頃「十七歳」だった私も今年「二十九歳」、その時々が蘇る音楽を紡ぎ奏で続けて居てくれることへの圧倒的感謝。ベボベに出逢わせてくれた友達とも未だに縁が繋がってる幸せ…

2014年、本『17歳』発売記念トークイベント@阿佐ヶ谷で、社会人になる直前だった私たちに「緊張を楽しむのが良いですよ」ってアドバイスしてくれたこと、小出さんは勿論憶えてないと思うけど、ずっと大切にしてる言葉です。ストーリーズ拾ってくれたりDM受け付けてくれたりするほど(恐れ多くて送れないけど…)ファンとの距離を近づけてくれるとは思ってなかった。。

いつまでも私にとってのLove in LifeとしてBase Ball Bearの曲たちに鳴り続けて居てほしいし、また色々な街で逢いたいです。

小出氏の一口ライナーノーツはこちら


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