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「老害の人」(内館牧子)読みました

*ネタバレあり
母に頼まれ購入。本人に送る前に読んでみました。多くの本屋で平積みされていて、とても注目されているよう。たぶん、読者の多くが60歳以上かと。身につまされるからね。
前半は予想通りの展開ですが、後半にいくにつれ、どうなっていくのかな、と、思わされました。会話でどんどん話が進んでいき、あっという間に読めます。
会話の面白さで引っ張っていくのは、脚本家ならでは。実際には、こんなに本音をつらつら述べたりしない。1本のハートフルなドラマをみた読後感があります。
本音ではあっても、登場人物全員が善人で、 “毒”はなかったです。安心して、80代半ばの母にも勧められる。毒が多いと、老人自身が読むには辛すぎるから。
お話は現代。緊急事態宣言で人になかなか会えない中で、どう生きていくか。いつ寿命が尽きるかわからない高齢者にとって、人に会えないのは生きているとはいえない状況。学校通いの若者と同じように、大きな受難です。
高齢者全員に共通するのは、寿命を意識する気持ち。楽観的な人も悲観的な人も無頓着な人も優しい人も意地悪な人も、それだけは、すべての高齢者が感じていること。体力気力身のこなしが、衰えてきたことも、すべての高齢者がわかっている。
まだ高齢者枠のほんの戸張口の私は、まだ感じていないことがたくさんあるだろうけれど、それでも、10年前、いや5年前とも、かなり違う心の感覚にきづく。これ、何とも表現するのが難しいです。個人差もあるだろうけれど、体の変化とともに心が変わっていくのは、人間誰でも生まれたときから一生続くのだなーって思います。
本の中で、孫自慢の50代女性が出てきましたが…孫のことに夢中の50代ってあまり見受けられない気がする。少し前の時代の主婦のイメージに感じました。
著者含め、今の70代以上は好景気の時代を駆け抜けた世代…老後の経済的不安なんて気にしなくてよかった。とはいえ、皆それぞれに懸命に生きてきたわけで、 「高齢者はいい時代を過ごしていいよねー暢気だよねー」などと社会から邪魔者扱いされるのは不本意のはず。しょんぼりなんかしたくない。社会が望む、都合のいい“老人枠”にはおさまっていたくない。その気持ちを、著者は代弁しています。
読み終えて…私は映画「ラブリー・オールドメン」を思い出しました。あの映画の登場人物のおじいちゃんのような気持ちで、私は、一生過ごしたいな。
同じ匂いのメッセージを感じた、一冊でした。


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