【経営の壁】 越後湯沢にクラフトビール店舗をつくり始めようと思った話

これは壁AC2023の2日目のエントリーです。みんな大人になった。

この話は私が経営しているJokun Brewing Labという規模的にはMicroより小さいNano Breweryに分類される(untappd基準)非常に小さい醸造規模のクラフトビール醸造所の話であり、他のブルワリーには当てはまらない部分もあります。

クラフトビールを飲んだことがある人の多くが「クラフトビールって高いよね?」と一度は思ったことがあるのではないだろうか。実際、都内のクラフトビール専門店では、人気のIPAスタイルのクラフトビールがパイント(≒473ml)で1400-1700円くらいで提供されるため、いわゆる大手のラガービールよりは高いのは事実であろう。

では、そんなに高い値付けがされるクラフトビールを取り扱うお店が法外な利益を得ているのかといわれると、多くの場合はそんなことはないだろう。いわゆる飲食店の原価率の目安といわれる30%を先ほどのクラフトビールの値段に適用してみても10L樽の仕入れ価格は1万円程度であるが実際はもっと高い場合が多い(少なくとも弊社の販売価格はもっと高い)。そこに送料を加え、さらにもろもろひくとそこまで多くの利益を得ているわけではないと考えられる。そんな仕入れ価格が高い商品を扱っていただけるというのは、製造側としては本当に感謝しかありません。

ジョークンって儲かってるの?

ジョークンを2019年に設立し、2020年4月に工場に併設する店舗をオープンし、2020年9月に醸造を開始し、気が付けば2023年の年末である。醸造してからもう3年であるからか、最近は「ジョークンは儲かっているの?」とよく聞かれる。そのたびに私ははっきりとNOと言っている。

今年はクラウドファンディングに挑戦し、皆様のおかげで成功させていただいた。ありがとうございます。そのためか、ジョークンのクラフトビールはとても売れている、印象があるのかもしれない。

ありがたいことに皆様に買っていただいたり、お店で飲んでいただいたり、飲食店様に樽を買ってもらったりしているおかげで、醸造を続けられておりクラフトビールの味が徐々においしくなっているという実感がある。実際、高い評価をいただくことも増えてありがたい限りである。まだまだ現状に満足せずさらにおいしいクラフトビールを研究し続けたい。


ただ、残念ながらジョークンは醸造開始以来ずっと赤字であり、世界的な感染症流行が収まれば売上が勝手に伸びていくという楽観的な展望は全く実現しなかった(2021年度と2022年度の決算より)。クラフトビールを作って売るというのは製造業であるため、売上に直結する一つの指標に醸造回数がある。残念ながらジョークンは、まだまだ感染症の機運の高かった2021年と、だいぶ緩くなった2022年の醸造回数は全く同じ30回であり、ジョークンの醸造設備は年間60回以上の醸造が可能な能力があるため、稼働率は50%以下である。

クラフトビール製造所の稼働率が低いというのは負のループに陥るきっかけとなりえる。なぜ稼働率が低いままなのかといえば、クラフトビールの販売量が伸びていないからであり、販売量が伸びなければ売上もあがらない。さらに、クラフトビールの醸造数(試行回数)はクオリティ上昇に重要な要素であるため、巡り巡ってクオリティ向上のスピードが高くならないという連鎖が起こりえるのである(弊社の場合はプレハブ冷蔵庫が小さいという問題もあるのだが)。また、クラフトビール販売の性質上、同じ種類だけを作るわけにはいかないため、一つの種類当たりの試行回数あたりは伸びないままになる。

ではそれを断ち切り、ビールの販売量を伸ばし年間の醸造回数を増やして、いろいろな試行を重ねてクラフトビールのクオリティを上げていくための一つの(しかし有力な)方法はなにかといえば、クラフトビールがたくさん売れるお店を起ち上げることである。

越後湯沢で店舗を起ち上げるきっかけ

新潟県湯沢町はジョークンのある地元十日町に隣接した自治体であり、子供の頃からスキーなどに連れていかれた記憶がある。東京で生活してからは十日町と東京を繋ぐ中継地点として頻繁に利用してきた。そのため、越後湯沢に宿泊するということはほとんどなかったのだが、その状況が大きく変わったのが2020年からの感染症流行というきっかけがある。2020年の夏以降、ジョークンのある十日町に用事があるのに、実家に宿泊することがはばかられるタイミングでは、越後湯沢に宿をとっていた。その時に感じたのは、越後湯沢にはスキーや温泉観光の拠点のためのインフラがとても整備されているということである。2020年の冬などは、観光客があまりいない状況であったが2021年、2022年と大きく回復させている(補助金申請資料より抜粋)。

「一度生まれたモノは、そう簡単には死なない」
ジョークンもそうありたい

もちろん、販売量を伸ばす方法は店を起ち上げるだけではないが、この越後湯沢に大きな可能性を感じてしまったため、準備を開始してからはほぼ迷わず直進をしてきた。

その成果をもうすぐみなさまに見せられるのが楽しみです(告知(今回の壁AC告知多くね))。


(正直もっとえぐい話を書こうと思ったのですが、心配されるかなと思ったのでマイルド目にしました。でも本当の理由は時間がなかったこともあります。時間の壁。)

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