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僕は「たった一人」になりたいと思います

絶対に言いたくない。
できれば隠し通して生きていきたい。

僕は次の3つの過去に対して、長年そう思い続けてきた。

家庭環境が複雑で、父親のDVがひどかったこと。
元々、女性として生まれたこと。
刑務所にいた経験があること。

自分の人生の、汚点。

自分の中で一生消えることのない、古傷。

これらのことに苦しみ、できれば早く自分の人生を終わらせたいと思ったことが何度もあった。

と、同時に、僕は自分のことを大切に扱ってこなかった。

それは周囲の人間関係に、如実に表れていたように思う。

気づいたときには、上辺だけの冷たい人間関係に囲まれていた。

当時は、それが自分の考え方や在り方のせいだとわからなかった。

だから恥ずかしいことに、僕はことあるごとに人や出来事、自分の性別、生い立ちのせいにばかりしてきた。

あるとき、このままじゃダメだと考えるようになった。

きっかけは、今の師匠との出会いだ。

なぜ、師匠を知ったのか、ぼんやりとしか覚えていない。

たしか、ひょんなことからネットで師匠を知り、情報を探すようになり、そこで興味を持つようになったと記憶している。

「この人の元で学んだら、俺は変われるかもしれない」

そう思うまでに、それほど時間はかからなかった。

現在、師匠と出会って三年くらい経つけれど、自分の選択は間違っていなかったと思っている。

僕の人生は、すごく変わったと感じているからだ。

それに、僕にとっていちばん大きいのは、師匠がいつも僕のことをわかろうとしてくれることだ。

これまで生きてきた中で、そんな人はいなかった。

本当は女性だということがわかった途端、いきなり絶交されたり、拒絶されたりしたことがあった。

師匠は、そんなことしたことがない。

前科があるとわかったとき、僕を非難したり、離れていった人がいた。

師匠は、そんなことしたことがない。

適度な距離感でいつもそこにいて、僕をずっと見守ってくれた。

僕はもう一人じゃないんだ。

これからはちゃんと生きよう。

そんなふうに思えるようになったのは、師匠のお陰だ。

僕が一人で頑張ってきたからじゃない。


どんな人も、けっして強くはない。

とくに孤独を感じているとき、些細なことで心が壊れてしまうことがある。

僕の場合、越えてはいけない一線を越えてしまいそうになったとき、最後に自分を引き留めたのは、この人を残して逝けないという思いだった。

たった一人でいいから、自分のことをわかろうとしてくれる人がいるだけで、もう少し頑張ってみようと思えるものだ。

僕が自分の人生の汚点を公表しようと思った理由は、そこにある。

師匠のように、僕も誰かの一人になりたい。

そのためには、まず人生の汚点だと思っているものを、公表する必要があると考えた。

公表するリスクがあるのはわかっていた。

だから、何度も、何度も、自分はどうしたいのか考えた。

結局、リスクがあるならやめるというのは違う、という結論に至ったわけだ。

髪型や服装をかえるように、さっと生き方も変えられたらいいんだけど。

どうしても、そこは変えられなかった。

さて、連載で書いてきたエッセイは、次回で終わらせようかなと思っている。

いつまでも過去の暗い話ばかり書くことに、飽きてしまったのだw

連載終了後、次は誰に向けてどんなことを書こうかな。


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