私の自転車...

徒歩の生活

これまでに何度かアメリカ留学中の思い出を何度か書いてきました。テキサス州ヒューストンには、合計で6年いました。車社会のヒューストンでしたが、最初の1~2年は徒歩やバスでの移動、その後は自転車の移動でした。
ある時、私の知人から、「けーじろーが大きな道の歩道を歩いているのを見たよ。」と話してくれた後、すぐに「あの辺りを歩いている日本人は、けーじろーくらいしかいないから、すぐ分かったよ!」と言われたことが数回ありました。確かに、アメリカ南部の熱く広大なテキサスで、片側4車線の大きな道路の脇をひたすら歩く日本人もそうはいないですね。

エコロジカルな生活

さて、縁もゆかりもないヒューストンでしたが、徐々に土地勘もつき、友達も増え、学校に近いところに引っ越しました。かなり便利になったとはいえ、バスや歩きは、やはり大変。当時は、車の運転が苦手というのもありましたが、経済的に維持するのが難しいこと、ガソリン消費をあまり好んでいなかったことなどの理由で、車以外の手段を好んでいました。まわりの人たちの中には、自然環境の保全やエコロジカルな生活を進んで実践している人たちもいて、自転車に乗ることの方がクールな印象も漂っていました。
実は、最初に住んでいたアパートで自転車を盗まれてしまい、その後に引っ越ししてからは、自転車がない時期が少しありました。その後、Project Row Housesなどに出入りをするようになり、自転車がもらえるということを聞きました?

「自転車がもらえる?」

確か、Project Row Housesに出入りするようになって、滞在制作の機会に恵まれ、少しずつアーティストの友人が増え出した頃、マット・サリヴァンという方にお会いしました。とてもフレンドリーな方で、レトロでカラフルなスティング・レイ・スタイルの自転車を乗り回していました。

https://letterpile.com/personal-essays/retro-bicycle

私は当時、自転車を持っていなく、マットさんは自転車を何台か持っているとのことで、このレトロなスティング・レイ・スタイルの自転車を貸してくれました。レトロなスティング・レイ・スタイルの自転車をProject Row Housesの周りで乗り回していた日本人の姿は、案外見慣れない風景だったと思います。
さて、話は戻りますが、この自転車も話によるとタダでもらえたとのこと。ただ、自分で組み立てたとも聞きました。どこで、自転車がもらえるのかを聞いたら、Workshop Houstonに行ったらいいとのことでした。この団体は当時、Project Row Housesの管轄にあった建物の一室を利用して様々な活動をしていました。

Workshop Houston

自転車をもらえる仕組みはこうです。街中に捨てられた自転車や寄贈された自転車が、このWorkshop Houstonに集められます。もちろん、ほぼ全ての自転車がしっかりと乗れる状態ではありません。まず、自転車が欲しい人は、その壊れた自転車を1台選び、全ての部品を外し、使える部品と使えない部品を選別し、フレームだけにします。この過程で、自転車修理のための道具の使い方も同時に学べます。そして、パンクしたチューブの修理方法やスポークの分解の仕方や調整の仕方も学びます。この時点で、自転車の構造や部品の役割、適切な道具の使い方などを学ぶことができます。一通り、終わったら、今度は先ほど残ったフレームでもいいし、他にストックしてあるフレームでもいいので、自分に合うフレームを選び、一つずつ部品をくけ足して、1台の自転車を完成させます。このようにして、自分の自転車を手に入れられたわけですが、この過程でもわかるように、学びの機会の連続でした。道具の使い方、英単語、地域の文化などについて、いろいろと学べました。
このWorkshop Houstonは、当時、ザック・モーザー、ケイティー・グッドマン、ベンジー・メイソン、セス・カプロンの4名で運営されていました。彼らは、オハイオ州のオーバリン・カレッジの卒業生達で、それぞれ異なった専攻で、各分野の知識やスキルなどを持っていました。その4名がザックさんの故郷ヒューストンで、活動を始め数年経った頃でした。

バイク・ショップ、スタイル・ショップ、ビート・ショップ

この自転車の修理や寄贈のプログラムは、「バイク・ショップ」と呼ばれ、その他に、シルクスクリーンでTシャツをデザインしたり、縫製をしたりする「スタイル・ショップ」、そして、自分たちで音楽を作曲し、歌詞を載せてレコーディングする「ビート・ショップ」もありました。アフリカ系アメリカ人の人たちの住む地域で、本場のラップやR&Bをストリートでやっている子供から大人までが入り混じり、自転車やファッション、音楽をアーティスティックに創作し、活気あふれる地域社会活動を目の当たりにし、衝撃を受けました。

それ以後、メンバーの人たちとも仲良くなり、いろいろな機会にお手伝いをしに行き、学ばせていただきました。中でもファンドレイザー・イベントや移転のお手伝いのことを思い出します。ファンドレイザー・イベントでは、地域のアーティストであるジャマール・サイルスさんの指導のもと、子供たちが協力し、溶接でフレームを極端に長くしたチョッパー・スタイルの自転車がオークションに出されたり、地元のアーティストたちがデザインしたTシャツが販売されたり、DJブースでパフォーマンスが披露されたりと、アートやクリエイティヴィティーが活用された地域社会づくりや課題解決を目の当たりにしました。また、地道な活動とともに、賛同者も増え、規模の拡大のために移転する際のリノベーションも手伝うことができました。そして、彼らの活動は、その後の私のさまざまなプロジェクトに関連してきます。
そのお話は、また次回以降にしたいと思います。ありがとうございました。

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