世界中のすべての人に会う?

先日は、思いもかけない出会いについて、文章で少し触れることができました。もともと、10代の頃から広い世界を知ってみたいと思っていました。大学に入った頃だったと思いますが、文化人類学の授業や国際文化に関する授業であったり、個人的にリサーチをしたりして、レニ・リーフェンシュタールの写真集「Nuba」に出会ったり、当時、大きな話題となっていた安藤忠雄さんの「連戦連敗」、「建築を語る」などに出会って、衝撃を受けたのを思い出します。
また、当時、少し年上の石川直樹さんが参加された北極から南極まで人力だけで行く「Pole to Pole 2000(=P2P)」の旅にもすごく憧れていました。当時、英語の習得に必死だった私は、旅や人との出会いの壮大な広がりに憧れていました。
そこでふと思ったのが、「世界中のすべての人に会ってみたい!」という考えでした。実際、機会を見つけては、自分なりの旅を続けて、20年ほどで30カ国ぐらい旅に行くことができました。実際の地球の旅もそうですが、私自身の内面の旅も深まってきたと思います。同時に、時間が経つにつれ、知識も増え、視野も広がり、世界情勢や環境の変化、人口増加など、この夢の困難さも理解できるようになりました。また、「会う」とは何を意味するのかも考えるようになりました。
私なりの旅では、昔なら思いも寄らなかった方々にも会うことができた時が多々ありました。数年前には、先述の石川直樹さんとも直に会って、少し会話をすることができました。
私がアメリカに留学していた頃、プライヴェート・ミュージアムでアシスタント・キュレーターをさせていただいていた時に、館長のジェームス・ハリサスさんから色々と学ばせていただいた中の一つに、「アーティストは、貧富や出自の差別なく、色々な人と会うことができる」と言われたことを思い出します。実際に、前例のないさまざまな功績を築いた館長さんのもとで働かせていただいたこと自体もこの言葉を象徴していると思いますが、これまでのアーティストとしての活動や生活を通して、様々な国の富裕層の方々や知識人、また、貧困や困難に直面している方々とお会いすることができました。それぞれの国の事情、信仰の事情、価値観の差異など、色々な背景も触れることができました。
アーティストとして生きることの冥利は、こういったことなのかもしれないなと思います。

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