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小さい頃に描いたクジラの絵

小さい頃は誰もが無邪気に絵を描いて、その世界やその中の物語に自分を投影することがしばしあったと思います。あの感覚は時間を忘れるぐらい心地のいい感覚だったと思います。アーティストとして活動をする傍ら、子供向けのアート講座で絵を描いてもらうことがあります。多くの場合、自分が誰と何をしたといった何気ない身の回りの出来事の中から印象に残ったことを大きく描き、お話をしてくれます。大人になってこのような絵を客観的に見させてもらうと、このような子供の想像力、没入感、臨場感をよく感じさせられます。見せてもらう絵は動いてはいないのですが、お話を聞くと登場人物や場面の物語がしっかりと伝わってきて、イキイキとした絵の感覚を感じさせられることが多々あります。
幼稚園か小学校の低学年の頃の思い出として、いくつか絵の役割を考えさせられることを思い出しました。何があったか覚えていませんが、なにか悲しいことがあったときに、当時の自分としては、大きなクジラを描き、そのクジラに泣いてもらったことを思い出します。大きなクジラを描きたかったので、ノートには書かず、勉強机を保護したり、資料を見やすく配置するシートの裏かどこか隠れるところに書いたのを覚えています。時より悲しいことがあったので、私の代わりにそのクジラに泣いてもらっていたのだと思います。
当時の小さな自分の中にある大きな悲しみを、海に住む大きなクジラの潮吹きのように、大きな涙として流してもらっていたのだと思います。当時の自分もそのような物語の中に自分を投影していたことを思い起こします。
アートは役に立たないとか、どのような点で役に立つのかといった疑問を時折聞きますが、本当に多様な作用があると思います。私の例のようにストレス軽減のための自己表現であったり、絵日記のようにどんな視点で物事を見たり、感動したり、発見したのかという自分も含め、他者へのコミュニケーションであったりとさまざまで奥深い物だと思います。
次回は、「幼い頃の友達へのプレゼント」について書きたいと思います。

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