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娘が不登校になった #1

7年前になるかな。もう。
突然娘が学校に行けないと言った。

私の中ではあまりに突然で、何言ってんの?甘えないの!あなたが行きたいって言った高校でしょう。遠いの分かってて選んだんでしょう。頑張りなさい!

そう言ったと思う。

すると娘は子供に戻ったようにワンワン泣き出した。なんだかその姿もおかしくて、笑ったように思う。

なーにやっちゃってんだか!って。

そこからだ。様子がどんどんおかしくなった。
朝ちゃんと起きてごはんは食べる。もうそろそろ準備できたかな?と部屋に行くと、布団をすっぽり被って寝ている。

たまには制服を着たものの、そこから布団に潜り込んでいたり。

唯一それから行けたのは中間だったか、期末だったか、テストを受けた時だけ。1月末から2月頭。2日後の娘の誕生日にはもう完全な不登校だった。

不登校、というのが私の中での娘の姿では想像も出来なかった。

娘は小さい頃から何にでも興味津々で、色んなことが知りたい、見てみたい、やってみたい子だった。友達も多く、誰とでも仲良く遊べるし、足は早くないものの、小学生の頃からやっていたソフトテニスはいつも県大会まで行くような子だった。我慢強さはもうちょっと欲しいとは思っていたが、悔しさをバネに出来る子だった。家ではぐうたらしてたり、弟には厳しかったりするけど、外に出たら色んなことに気を回し、全体の世話まで出来る子だった。

念願の高校に合格し、毎朝6時前には家を出るけど、やりたいことをやって、友達も沢山いて、楽しそうで、、、と思っていた。教室から見える熊本城が誇り高い、とも話していた。

こんなはずじゃなかった。
そう思った。どうしてこうなってしまったのだろう。

最初は認めることが出来ず、娘を力ずくで起こそうとした。そこから私が娘に殴られることになるとも知らず、やってしまった。殴られた。何発か。

痛い。なんで殴られるんだ?でも娘は人を殴るような子じゃない。ってことは、そこまでして嫌なのか。そんなに嫌なのか。殴られたところもだけど、心が痛い。

ショックだった。
どうしていいのか分からなかった。毎日泣いていたのを覚えている。

高校にも相談に行った。
学校では元気のいい子の一軍と呼ばれるグループ。三軍と呼ばれる大人しい子のグループ。二軍はどちらとでも仲良くなれるグループがあり、娘は二軍だったと聞いた。みんなから必要とされる子で、娘の名前はクラスでもよく呼ばれていた、と。クラスで何かがあった訳ではないようだった。

最後に言われた言葉は、最近は学校に来れなくなる子は多いんですよ。娘さんだけではないんです。1年生の単位はしっかり取れていますから、ゆっくり休ませてあげてください。ということだった。

ゆっくり休ませてあげられるのは助かった。しっかり単位が取れていたのは、それまできちんと頑張ってきたからだ、と少し安心もした。

しかし、最近は多いんですよ、という言葉はとても引っかかった。

多いんですよ。。。だから何?娘だけじゃないから何?安心しろ、と?心配ない、と?違うよね?何なの?その言葉、今、私に必要?

よく分からなかった。なぜそんな言葉を聞かなければならなかったのか。

よく分からないまま、不安は大きくなっていった。
学校に相談に行ったはいいが、結局何の解決にもならなかった気がした。

娘が着れなくなった制服を着て、生き生きと歩いている同じ年頃の子を見るだけで辛かった。涙をグッと堪えるのが苦しかった。外に出さない涙は、喉の奥から塩っぽく流れていった。

家に帰ると、娘はやっぱり布団の中。

全く動かない娘を家に置いて、私は意を決して精神科に行った。病院に救いを求めに。

そこで出逢った本が私を変えた。
なんという本だったのかは覚えていない。でも、同じように不登校の子どもを持つ母親の記だった。

心が風邪を引いたんだ、と書いてあった。
身体が風邪を引いたら、温かくして休むことと、栄養たっぷりのご飯で元気になる。
では、心が風邪を引いたら心に栄養をあげるんだ、と。その言葉が響いた。

心の栄養。
今までいっぱい手をかけて来たし、愛情は注いできたつもりだった。。。
でもまだ足りないのか。娘はもっともっと愛情を欲しがっているのか。いいよ、どれだけでもあげる。全部あげる。私の全てをあげる。あなたがもういらないって言うまで、ずっとずっとあげる。

よし、わかった。
そのままのあなたでいい。全て受け入れよう。今までのあなたも、あなたそのもの。
今のあなたも、あなたそのもの。たくさん違うけど、どれもあなた。そのままでいい。全部愛してる。

そんな気持ちを込めようと思った。

でもどう伝える?
今、話しは聞こうとしない。なかなか布団から出てこない。
。。。そうだ。私がずっと誕生日などに書いてきたように、好きなポストカードの裏に手紙を書こう。そう思いついた。とても私らしいやり方だと思った。これなら娘に伝わるのではないか、と。

何枚書いただろう。
今まで買いためていたポストカードに、その時の気持ちに合うものを選んでたくさん書いた。
娘が産まれてきてくれてどれだけ嬉しかったか。どれだけ楽しかったか。娘が私をどれだけ幸せにしてくれたか。あんなことしたね。楽しかったね。本当に可愛かったよ。大好きだよ。思いつくままに、色んなことを書いた。

時にはポストカードの色から、小さい頃の娘に作ったお洋服を思い出し、その思い出を綴ったりもした。

何が娘に響くか分からない。
数じゃないことは分かっているけど、それしか思いつかなかった。とにかく、いまはあげるだけ。反応もない娘にとにかくあげるんだ。そう決めた。


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