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#教科書で出会った物語〜桜で染める話

『憧れの作品前に立ち止まり 14歳の自分と出会う』


「#教科書で出会った物語」の記事を見つけ、私の思い出の教科書を書きたくなった。

私の心に最も残る教科書は、中学2年国語の教科書に載っていた志村ふくみさんが桜で染める話。
(大岡信さんの「言葉の力」で、書かれたものだったらしい。)

桜の花が咲く前に剪定された枝から染料をとり、媒染や灰汁を変えながら、桜の色を染めていく話だった。

私にとって、天然の染色の話は初めてで、感動と興奮で、学校から帰宅して直ぐに
「これ、やりたい!」
と母に何度も教科書を見せた。
私の実家は街中の狭い家だったので、母に、
「この家のどこでこんな事が出来ると言うの!
これは山の中でしか出来ない事なの!諦めなさい!」
きっぱりと言われてしまい、染色の事は諦めるしかなかった。

志村ふくみさんのご活躍は、着物雑誌などで見ていたが、本物の作品を見てしまうと「やりたい」気持ちが抑えきれなくなると思い、作品展に足を運ぶ事は避けていた。

針仕事を始めるようになった頃(25年前)、私の師匠が読んでいた本が志村ふくみ著『色を奏でる』だった。
自分の道を定めた後だったので、今なら志村ふくみさんの本を読んでも大丈夫だろうと、早速この本を手に入れ、何度も何度も読んだ。
そして、私が40歳を過ぎた時、美術館での展覧会に足を運んだ。

初めて見る志村ふくみさんの作品に心臓はドキドキ。
やはり、志村ふくみさんの作品は、強い。
想いが、ビシビシ伝わってくる。
中学2年生の時に文章で出会ってから約30年経過していた。
作品を前にすると、中学2年生の興奮した自分が戻ってくる。

すごいなぁ、すごい人がいるなぁ。

一途に仕事をする、その姿勢を真似していけたらと、志村さんの大きくて遠い背中を見て歩く。

教科書って素通りしていそうで、でもずっと心に残っているものだ。
そして、一生の仕事をそこで見つけてしまうかもしれない。
とても重要な本なのだと、この企画に参加して改めて感じた。

素晴らしい企画に参加させて頂き、ありがとうございました。