【エッセイ】美声の人
ゴールデンウィーク前半、私は北海道に帰省していた。生まれた街では、高校の同級生たちが手を広げ、私の帰省を待ってくれていた。『蘭亭、5時半』。主語も述語もない、シンプルなメッセージ。「どこに行く?」でも「何を食べる?」でもなく、突然の『蘭亭、5時半』。これほど楽な人たちもいない。それぞれの置かれた立場でそれぞれに心を配りながら、自分の役割を果たし、日々を過ごしている仲間とのたわいない会話は、これ以上ない豊かな時間であった。
さて、今回の帰省の目的は法要であった。
ご長男に住職