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【経セミ・読者コメント vol.1】株式会社エコノミクスデザイン・丸茂宗平さま

はじめに(編集部より)

経済セミナー編集部です。弊誌の note では、読者の皆さまからお寄せいただいたご意見・ご感想などの掲載もスタートします!
もちろん、ご執筆者のご了解をいただいたうえで、掲載内容をご相談して進めていきます(記名でも匿名でもOK)。

この note では、その第1弾として、株式会社エコノミクスデザイン丸茂宗平さま(まるも・しゅうへい)から、『経済セミナー』2024年2・3月号(特集:中央銀行デジタル通貨は金融をどう変える?)について、特に「ビジネスとの関連」の視点からコメントをいただきました。ぜひご覧ください!

【以下、コメント👇】


経済セミナー 2024年2・3月号へのコメント

丸茂宗平(株式会社エコノミクスデザイン)

弊社エコノミクスデザインは、経済学の学知を民間企業や行政機関に提供し、実社会・現実経済に点在する課題の解決を目的とした会社です。現在では、スタートアップから東証プライム市場上場企業、巨大な多国籍企業まで様々な企業にコンサルティングサービスを提供しています。

今回は、いくつかのトピックについて、ビジネスとの関係性に触れながらコメントさせていただければと思います。

■ データ収集段階からのコミットメントを

「特集:中央銀行デジタル通貨は金融をどう変える?」(p.5~)へのコメント

日本ではデータの利活用がまだまだ進んでいないというのが現状です。中央銀行デジタル通貨が導入されれば、通貨の移動をデータとして簡単に追えることになります。そのため、データを基にした政策立案もより実行しやすくなります。高いレベルで分析するためには、「どのようなデータを取得し、どのように貯めるべきか」といったデータの収集段階から経済学者が積極的に携わるべきだと考えています。


■ 行動経済学とビジネスとのシナジー

室岡健志「行動経済学の学び方」(P50〜)/成田悠輔・矢田紘平「実験デザイン(2)(データで社会をデザインする 第15回)」(p.69〜)へのコメント

弊社がコンサルティング事業で様々な企業と関わっている中で、行動経済学や実験経済学の知見が求められる場面は多くなってきています。

直近では、商品のプライシング(正確にWTP〔Willingness to Pay:支払意思額〕を測定し、価格設定に活かす)案件の際に、参照価格効果を考慮し調査設計を行った結果、その効果がデータで顕著に現れてくる事例がありました。実際に企業がデータ分析・調査を行う場合には、参照価格効果を考慮に入れて設計ができないなど、研究の世界では考慮するのが当たり前でも、実際の企業では考慮しきれない要因が多く存在します。行動経済学や実験経済学の知見を民間企業と一緒に使っていくことのインパクトは研究者が思う以上のものがあります。

室岡健志先生(大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)も「修士・博士課程の学生の方が行動経済学を学ぶ際には、行動経済学だけでなく他分野を専門にすると研究の幅が広がる」という旨の内容を書かれていますが、ビジネスの観点でも、行動経済学と他分野を掛け合わせた研究のニーズは高いと考えています。弊社が関わる案件では「行動経済学×データサイエンス」が求められるケースが大変多くなっています。

企業の行動経済学へのニーズは確実に高まっているため、研究を行うだけでなくビジネスにも関わりたい学生・院生の方には、「行動経済学×他分野」という形でご自身の興味・関心のある分野との相互作用(シナジー)に焦点を当てながら学ぶことをお勧めします。


■「見えない価値」をいかに測るか

小西祥文「気候変動の社会的費用を考える(1)(新しい環境経済学 第8回)」へのコメント(p.110〜)

気候変動の社会的費用の問題にも、ビジネスにおける課題と通ずる点があると考えています。昨今SDGsやESG投資への関心が高まっていることも受け、SROI(Social Return on Investment:社会的投資収益率)を考えた上で企業活動を行いたいという相談やESGの観点から企業価値を正確に測りたいという相談が多くなっています。これらの相談に共通するのは「見えない価値」を可視化したいということです。近年、無形資産や社会への影響を可視化し、企業価値を高めたいという要請が高まっています。「見えない価値」を可視化するという意味では、気候変動の社会的費用の測定も同様かと思います。こうした要請に高い精度で応えることができるのが、経済学です。一見ビジネスとの関連がなさそうな分野でも、ビジネス界からの潜在的なニーズは確実に存在しています。現実社会で提供されているあらゆる財・サービスについて「このような設計をしたらさらに良くなるのに」と少しでも考えたことがある研究者の方は、ビジネスの現場へアプローチをしてみることをぜひオススメします。思わぬところで「あなたの研究を私たちのビジネスに使ってみたい」という反応を受けるはずです。



丸茂さまからコメントをいただいた『経済セミナー』2024年2・3月号(特集:中央銀行デジタル通貨は金融をどう変える?)の詳細情報は、以下のリンクよりご覧いただけます!(電子版も発売中)


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