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あの日、がんばれなくなった僕へ

やあ、あの日の僕。いま僕は、君に向けて文章をつづっている。
気分はどうだい?最低な気分かな?体調はどうだい?人生で一番調子が悪いかな?いま隣に誰かいるかい?一人で泣いていないといいな。


さて、少しだけ近い未来の話をしよう。
近いうちに君はうつ病と診断され、いま勤めている会社を辞めることになる。だけど心配しなくていい。もう少ししたらいまよりちょっとだけ元気になって、派遣の仕事が決まるはずだ。でも、絶対に無理はしないでほしい。またすぐにつらい気持ちが襲ってきて、君はベッドから起き上がれなくなるから。
そうなったら最後、何もできなくなって、自分だけじゃなくて、周りの人にも影響が出てくる。責任感の強い君のことだから、そんなことになったら余計に自分自身を追い込むことになる。だから、絶対に無理はしないで。つらくなったら逃げていいんだし、ゆっくり休んだっていいんだ。君自身が思っているより、君は心も体も疲れてるんだよ。それは知っておいた方が良い。


じゃあ、少しだけいまの君の話をしようか。
いま現在はどうだい?ゆっくり眠れているかな?息苦しくはないかな?薬のせいで思考が鈍っていないかな?一人で考え込んでばかりいないかな?とても大事だったあの人のことは忘れられたかな?
いまの君はさっきも書いたように、とてもとても弱ってる。もしかしたら誰にも理解されない苦しみかもしれないけれど、大丈夫、僕はわかるよ。
たくさん悪夢を見たよね。食べ物の味がわからなくなったよね。買い物に行く気力もなくて、シャンプーを切らしたよね。どうしようもなく苦しくてつらくなって、昼間なのに号泣してしまったよね。
いまはそれでいいんだよ。大丈夫。過ぎてしまえばきっと君はその苦しさを笑い話にできる。僕が保障するよ。だから心配しないで、いまは思いっきり泣いて叫んで、過ぎたことをひとつひとつ受け入れていこう。大丈夫、大丈夫。


さあ、今度はいまの僕の話をするよ。
実のところ、いまの僕も君と同じようについさっきまで泣いていたんだ。いろいろなことが解決したし、前には進んでいるんだけど、やっぱりどうしても苦しくてつらいときがある。ごめんね、いまだにそこは乗り越えられてないんだ。おまけに今日の朝も悪夢を見たし、薬をやめたとはいえ思考はまだ鈍いし、味覚も戻りきってない。そんで残念なことに、あの人のことも忘れることができないんだ。
でもね、この二年間君が生きていてくれたおかげで、いまこうして僕は君にメッセージを送れてるんだよ。ほんとうにほんとうに感謝してる。ありがとう、生きていてくれて。
よく「生きているだけでいい」なんて言う人がいるけど、たぶんその言葉は君を苦しめることになるから無視していいよ。君は君自身が乗り越えてきたものだけを信じればいい。それは君だけが持ってる事実だから。


最後にこれからの話をしよう。
やっぱり気分はあんまりよくないし、体調も最悪だし、苦しくてつらい日はきっとこれからもたくさんあると思うんだ。でもさ、君は死ななかったし、今日の僕も死ななかった。きっと僕たちにはまだやりたいことがあったんだね。それだけはきっといま苦しんでる君も思ってるんじゃないかな。
もっともっと音楽を作って、もっともっと文章を書いて、もっともっとたくさんの人たちに料理を食べてもらって。
それができたらきっと最高だよね。だから君は諦めなかったんだよね。だから僕はいま生きてるんだよね。君が生かしてくれたんだ。よくがんばったね。ありがとう。僕も君を見習わなくちゃいけないね。いまはちょっとがんばれないけど、寝て起きたら、もうちょっとふんばってみるよ。約束する。
でもこれからはほんとうに倒れちゃいけないから、無理はしないようにするね。ごめんね、わかってくれるとうれしいな。


あの日、がんばれなくなった僕。
もう憂鬱な気分にならなくていいし、一人で泣かなくてもいいんだ。ゆっくり休んで、元気になったら、また笑えるように願ってる。

じゃあまたそのうち。あんまり泣かないようにね。僕もだけど。



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