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「PERFECT DAYS」から学ぶ、自分の人生の主役になる方法

誰もが自分の人生の主役。

そんなことは誰もが理解している。
理解しているが、誰も実感はしていない。




先日「PERFECT DAYS」を映画館で観た。
2023年12月公開なのでもうそろそろ映画館での公開が終わってしまうかもしれないと急いで観に行った。

公開からしばらく経っているのに、ほぼ満席に近い映画館もあった。
3ヶ月が経っているので、複数回見に行っている人も多そうだ。

映画の美学と監督の影響

実際に映画を見てみると、「どのシーンも画がきれい」という感想が最初に持つほどとても美しく好きな映画だった。

なぜこんなに画がキレイなのかと思って、少し調べてみると監督を務めたヴィム・ヴェンダーズは、日本の巨匠小津安二郎作品が好きで傾倒していた時期があるという。

映画のパンフレットでヴィム・ヴェンダーズ監督を紹介する際には、このように関係について触れられている。

小津安二郎との出会いは、キャリアのなかで大きな出来事だった『東京物語』のタイトルからはじまり、ヴェンダーズ本人のナレーションで小津の形跡を探す旅を記録した『東京画』では、小津の映像がもつ優しさと秩序について語っている。

映画公式パンフレットより

映画のテーマとスタイル

小津作品とヴィム・ヴェンダーズ作品の共通点は多い印象を受ける。

  • ミニマリズムな画作り:無駄な要素を極力減らし、シンプルながらも意味深い画を作っていること

  • 静寂の扱い方:キャラクターの内面的な感情や状況の微妙な変化を伝えるために静寂を用いること

  • 家族の関係をテーマにした作品:家族の絆、親子関係、そして人間同士の繋がりを深く掘り下げたテーマが多いこと

過去見た中でも際立ったミニマリズムで余計なものがない美しいと思う映画だった。

その美しい画に合わせて、音楽も良かった。(音楽リストは最後に載せているので、興味があったらぜひ)
センスが良い音楽で、本当に美しい画に合う。

主人公と生活の描写

主人公はトイレの清掃員をしている中年の男性。
浅草付近の古い木造アパートに暮らしながら、東京のトイレを清掃する仕事をしている。
東京のトイレをただひらすらキレイにする

その生活の風景をただ淡々と映していくシーンが続く。
最初は淡々なシーンが続くので飽きてしまいそうだと思ったが、その生活の一つ一つの画が美しくて気にならなかった。
その日常のシーンが良すぎて、今まで思ったことがなかったのにこういう生活をしてみたいと思ったくらい。

仕事以外では他者とはあまり関らず、ひたすら自分のルーティーンを守る生活。映画の時代は現代に近いはずなのに、現代っぽいモノがほぼ登場しない。
現代人の多くが利用しているテレビ、スマホ、SNSのどれもが登場しない。
趣味は小説、写真、カセットで音楽を聴くこと、植物を育てること。
お金のかからない最低限でシンプルな生活。

自分の人生を見直すきっかけ

この主人公のような生活は、一般的には主役になり得ない。トイレの清掃員という地味なインフラの仕事だ。
憧れる人も少ないだろう。
実際になりたい職業ランキングで「トイレの清掃員」が上位になったことは過去一度だってない。

「トイレの清掃員」だけじゃない。
多くの人はなりたい職業にそのままなれる人は少ない。

例え、自分がなりたい職業に就いた幸運の人だって、憧れた気持ちを持ったままに仕事につき、その仕事に満足しながら生活をしている人はどれだけいるだろうか。

働く中で何のために働くのか分からなくなり、自分は人生の主役じゃないのかもしれないと思う。
誰かを主役にするために存在するモブなんだと。

誰を主役にしているのか、仕事であれば上司かもしれないし、社長かもしれない。
家族であれば、妻のためかもしれないし、子供のためかもしれない。

社会人になってから、自分が主役の期間があっただろうか。
この映画を観るまでは、なんとなく自分の人生のモブ感を感じて辛くなっていた。

でも、この映画で役所広司演じる平山の生活を見て、誰もが自分の人生の主役になり得るのだということを感じた。
平山はスマホを持たないからこそ、誰とも比べない。
自分ができることだけを淡々とこなしていて、ブレない自分の軸がある。無闇に他人と比べず淡々と自分のできることをやる生活は何て気持ちが良いのだろうと感じた。

比べなければ誰もが自分の人生の主役になりうる。
今はSNSがあって、自分の上位互換なんかすぐに見つかる。

だからこそ、比べないで自分のできることを淡々とやるべきことをやる。
それだけで人生におけるモブ感は減ってくると思う。

無理やりグローバルにならなくていい。
辛くなるくらいなら半径5mで生きる。

そんなことを思った映画だった。
映画に影響されてSNSの時間を減らそうと思った。

インスタントなモノに溢れていた生活から切り替えて、もう少し丁寧に暮らしてみたくなった。

目的なくSNSサーフィンしていた時間も本を読む時間に切り替えた。
Youtubeを見ていた時間が映画を観る時間に切り替えた。
本当に感覚でしかないが、なんとなく生活が落ち着いた感覚がある。

ありきたりだけど、必要以上に世界に触れなくて良いのかもしれない。
そう感じた映画体験でした。

ちなみに、ラストシーンの感想は人によって分かれるようですが、私は「後悔と自分の人生を肯定する気持ちが入り混じっている」と感じました。


#映画にまつわる思い出  を書いてみました、また好きな映画に出会えたら、書いてみたいと思います。


映画と他の作品との関連

ちなみに、淡々と生活を描く感じが何かの映画に似ていると思っていたのですが、鑑賞後に思い出しました。
「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」でした。観賞後の印象はだいぶ異なるので、「PERFECT DAYS」が好きで見に行くのはお勧めできないですが、面白い映画です。


PERFECT DAYSのサントラ

  • The Animals 『House of the Rising Sun』

  • The Velvet Underground 『Pale Blue Eyes』

  • Otis Redding 『(Sittin’ On) The Dock Of The Bay』

  • Patti Smith 『Redondo Beach』

  • Lou Reed 『Perfect Day』

  • The Rolling Stones 『(Walkin’ Thru The) Sleepy City』

  • Sachiko Kanenobu 『Aoi Sakana』

  • The Kinks 『Sunny Afternoon』

  • Van Morrison 『Brown Eyed Girl』

  • Nina Simone 『Feeling Good』


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