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歴史専門外でも誤った歴史事実を伝えてはいけない

長年歴史が好きで暇があれば歴史の本を読んでいるのですが、時々、歴史が専門でない方が書かれている歴史×〇〇(経営、リーダーシップ等)の本を読むことがあります。
 
私は、歴史専門外の方が、自分の経験や知見を元に歴史×〇〇を書かれることはとってもよいことだと思います。このような本が歴史が歴史にとどまらず、現代の問題・課題を解決するきっかけにもなります。私自身、こうした執筆を目指しています。
 
但し、残念なことがあります。このような歴史×〇〇の本の中には、歴史上事実について基本的誤りが少なくありません。それは現代でも認定に争いがあるような事実ならよいと思いますが、動かしがたい事実についての誤りだったりするのです。
 
最近読んだ本では、日露戦争(1904-1905年)の中で、日本軍のことを「関東軍」と書かれていました。関東軍とは、日露戦争により日本が獲得した満州鉄道を守るためにつくられた軍隊であり、正式には1919年の設立です。日露戦争時には関東軍は存在していません。
ちなみに、この本の著者は多くの本を書かれ、テレビにもよく出演されています。
 
小さなことかもしれませんが、こうした誤りが歴史専門外の方に本当に散見されます。著者は、「本質的なところで伝わればよいではないか」と思うかもしれませんが、私は2つの点から間違いだと思います。
 
1つ目は、本全体の信頼性が失われます。それが誤りだと気づいた読者はその本全体の記述について「本当なのだろうか」と思います。
 
2つ目は、読者に誤った歴史事実を教えてしまうことです。この本の読者が学生であれば、次のテストの時に誤った回答をしかねません。
 
余談ですが、司馬遼太郎先生はしばしば「史実と違う」と評価を受けることがあります。確かに、司馬先生の作品はフィクションも織り交ぜていますが、私の認識の限り、こうした事実を間違えることはありません。はっきり言えば、事実誤認の本で感じるイライラを、司馬先生の本で感じたことがありません。
 
繰り返しですが、私は歴史×〇〇の本が増えることはよいことだと思っています。しかし、こうした本が事実誤認で信頼を失ったり、よくない影響を与えるのは、本当にもったいないことです。インターネットをはじめ事実確認をする手段は沢山あるので、誤りがない事実を伝えたいものです。

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