「人間関係の種類」と「中高生支援」
一体何が正解?
「若い人と関わっているけど、どんなことをしてあげればいい分からない」
ちょうど私がNPO法人河原部社に入ってミアキスで働き始めたのが一年と少し前になりますが、中高生と関わったことなどなかったので、こんな気持ちでいっぱいでした。
ただじっと話を聴いていればいいのか。それとも何事にもチャレンジするように伝えればいいのか。それか距離感を保って暖かく見守ればいいのか。どれも正解で不正解のように感じたのを今でも思い出します。
Developmental Relationshipsとの出会い
青少年育成、つまり啓発的&スキル形成的なユースワークの分野について何も知らなかった私は、とりあえず発達心理学についてできるだけ知識を深めようと決心しました。最初は手探りに学術論文やアメリカの事例などを調べましたがどれともピンと来るものはなく…しかし、それでも自分自身やミアキスで何か役に立つような情報はないかとコツコツと調べ学習を続けました。
そこで最終的に出会ったのが「Developmental Relationships」です。
Developmental=発達的な、発達の、発達に紐づいた
Relationships=関係性、人間関係
Developmental Relationships (DR)とは Search Institute という青少年発達の研究団体が研究の結果作り上げた、5つの人間関係の要素を含んだフレームワークです。
これらの5つの具体的な要素は…
Express Care (思いやりを表現する)
Challenge Growth (背中を押す)
Provide Support (サポートする)
Share Power (エンパワーメントする)
Expand Possibilities (可能性を広げる)
それぞれ一つずつ細かくみていきましょう。
思いやりを表現する
「あなたは大切な存在なんだよ」ということを言葉や態度で示しましょう。
話を聴くときには偏見を持たずに集中して話を聴いてあげること。
目つきや話し方に気を遣って温かい雰囲気を醸し出すこと。
何かを成し遂げたらそれを認めて褒めてあげること。
若者が「この人は私のことを気にかけてくれているんだなぁ」と感じるように思いやりを表現しましょう。
背中を押す
「あなたならもっとできる」と若者のチャレンジ精神を促しましょう。
若者の能力を把握して、彼らがベストを尽くせば達成できる目標を作ること。
設置した目標に対し責任感を持たせること。
失敗経験から成長できるように一緒に振り返りをすること。
若者が「よし、もっと頑張ろう」と感じるように意識しましょう。
サポートする
「こうやったらうまくいく/頑張れるよ」と若者の主体性や自治的な精神をサポートしましょう。
困難な経験や社会の仕組みの中、生きることの手助けをすること。
若者が持つ能力、強み、力強さを気づかせてあげること。
自分で自分の人生を作り上げる自信をつけさせてあげること。
若者が「もしかしたら私、色々なこと頑張れるし、できるかも」と思ってくれるようになるといいかもしれません。
エンパワーメントする
「あなたを大人と同様に尊敬しているんだよ」と若者を平等なパートナーとして捉えましょう。
大人が一方的に何かを教えるだけではなくて、若者からも意見や考えをしっかりと聴くこと。
イベント、プログラム、社会の仕組みを作る際には若者を意思決定者として含めること。
若者が主体的に物事に取り組めるように、リード (主導) する機会を提供すること。
若者が「周りの大人から尊敬されているかも」と感じてもらえるようにしましょう。
可能性を広げる
「あなたにはこんな (人) や (場所)がぴったりかも」と若者の世界観を広げてあげますよう。
新しい考え方、価値観、世界観、場所、経験に触れる機会を提供すること。
若者のスキル、興味、関心を見つけ、それらを適切な資源 に繋げること。
成長を促してくれる人と若者を繋げること。
若者が「私の "スキ" を知っている大人が 、"スキ" を色々なことと繋げてくれる」と感じてもらえるように努力しましょう。
私が経験したDR
私は現在ミアキスでプログラムコーディネーターとして働いていますが、高校三年生のときにミアキスの立ち上げメンバーとしても本施設に関わっていました。主にスタッフの皆さんからはDRの要素で言う「思いやり」と「エンパワーメント」の要素を強く感じたのを覚えています。
私が話や意見を言うときは大人のスタッフの方々全員がしっかりと私の話を聴いてくれて、それも適当な聴き方ではありませんでした。私の言うことをしっかりと理解し、それに相当な回答や質問をしてくれました。スタッフの人は私に対して過度に気を使う訳でも、厳しすぎる訳でもありませんでした。ただただ温かく、私が彼らと過ごす瞬間瞬間を大切にしてくれているような感じがしたのを覚えています。今でもこの時期を思い出すと、心が温かいオレンジ色に気持ちになります。
そしてスタッフの方々は私をパートナーとして扱ってくれました。本施設のオープン前は家具も内装も何も存在せず、ただの箱がありました。私を含む他数人の高校生メンバーは特別にオープン前の施設に連れて来てもらい、下記のような質問をされました。
「ここで何がしたい?」
「この施設をどんな感じにしたい?」
「どんなものが欲しかったり、必要?」
「こういう施設を建てることってどう思う?」
「施設を作るにあたり中高生の意見を聴くという」ということがしたかったようです。しかし、これは単に意見を述べる場ではありませんでした。当時高校生の私からすると大きな出来事だったのです。
「大人が僕を頼っている」
「大人が僕を必要としている」
「大人と同等に会話している」
今までこういった経験がなかった私にとっては、とても意味深いエンパワーメントの瞬間であったとも言えます。
大人が何をしているかではない
しかし、当時のスタッフの人にこの話をすると、このような反応があるかもしれません。
「そうかなぁ? 普通に少し気を使いながらケンジと接していただけだけど」
大人はそこまで意識して何かしていた訳でもないかもしれません。しかし、高校生の私は当時、これらの要素をしっかりと感じ取っていました。
つまり、「どれほど我々大人が若者のために何かをしている」が重要なのではなくて、「受け手側の若者が大人との関係性をどう評価しているか」が大切だと思います。どんなに若者のためを思って行動しても、最後にそれを感じて、気持ちを芽生えさせるのは若者自身の何者でもありません。同じように、DRの要素をしっかり提供している気持ちになっていても、それらの要素を実際に若者が感じているとは限らないのです。
あなたのDRの実体験は?
今回の記事ではDRの5つの要素の紹介、DRの実体験の紹介をしました。如何でしたでしょうか? 読者のあなたが幼少期を振り返ったときに、どんな人が頭に思い浮かばれますか? 家族、恩師、友人など様々な人々があなたの人生に大きな影響を及ぼしてきたと思います。DRの5つの要素を踏まえながら、どの人がどんな人間関係を構築してくれたのか考えてみてもいいかもしれません。
併せてこちらの人間関係に関する記事もどうぞ!
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