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自治体職員必須知識 その7:公共政策は問題解決型でいこう!

大学の教科書などでは「公共的問題を解決するための、解決の方向性と具体的手段」と書かれているのがこの「公共政策」である。社会で生きて行く上で起こる様々な問題のうち、特に公共性が高い問題を対象とする。
ここで大切なのは対象が「問題」であり、「課題」ではないことだ。

「問題」とはあるべき姿と現実のギャップを指し、「課題」とはそのギャップを埋めようとする時に具体的に取り組むべきことを言う。
なので自治体の仕事としては「問題」を解決することが目的となり、「課題」を解決することが手段となるわけだ。
逆に言えば、「課題」は具体的に見たり聞いたりデータで立証しやすいが、その背景に隠れた「問題」は見えにくく分かりにくいものが多い。

ところが、各自治体での公共政策立案研修の中身を伺うとびっくりすることがある。とある自治体では中堅職員を集めて住民から多く寄せられる地域の「課題」について話し合い、その対策を考えて公共政策の立案研修を行ったと言う。自分たちの「経験」や他自治体の先例を参考に「課題」解決のための政策をまとめ市長に提出したらしい。

担当者から話を聞くと自慢げに講座の話をされるので、こちらとしては何も言えなくなってしまった。しかし、これはあきらかに公共政策立案研修としてはちょっと残念な内容だと思う。「課題」だけを対象として個々の問題に「すぐやる課」みたいに対応すれば住民評価は高いだろうし、成果を上げた気分にもなれるがそれでは根本的な問題解決にはならない。
以前『その5:デジタル化は思考をWhat→Whyに!』でも説明したが、現出した課題からその根源が何かを「Why?」思考で深堀し、「問題」を探り起こしこれに対応するための政策を立案としていくのが本来の公共政策立案だ。

ただこれについて研修担当者を責めることはできない。何故ならばこの「問題」の深掘りに至らない原因の一つが自治体によくあるとある慣習のせいかもしれないからだ。
一般に自治体は住民に向けて公共の場で「うちの自治体の“問題”」とはなかなか言わない。たいていの場合「うちの自治体の“課題”」と表現する。とある市役所職員の話によれば「問題」と言う言葉はネガティブ感が強いだけでなく『なぜ「問題」を放っておいたのか』とクレームにもなりかねない。そのため本来の意味とは違うと知りつつも意識的に「課題」と言い換えるのが慣習化しているそうだ。

これが原因となって多くの自治体内で「問題」と「課題」がごっちゃになって適切な問題解決思考ができない職員が増えた・・・のかもしれない。(笑)
まあこれは半分冗談だ。実際、問題の深掘りをしたくないことも時にはある。問題の根源が100年以上にわたって地元に続く地域対立だったり、地元有力者が絡む利権であったりということもあるのだ。なんとなく敬遠してしまってもおかしくはないだろう。

その他を含めていろいろ地域ごとの事情もあるのだろう。しかし、それでも内々で問題の深掘りはきちんとした方がいいと断言することができる。万が一その問題が急速に肥大化し大事になった際、対応を迅速に行うためだ。危機管理と考えていただきたい。

一般的には、
1.問題にかかわる適切な情報やデータ、統計データを集める
2.問題の原因についてWhy?思考で深掘りを行う
3.仮説を立てて目的を明確化し、解決するための手段を論拠や実データに基づいて構築する
(「その3:EBPMとはなにか」で書いた通り、証拠に基づく政策立案を行う)
4.上記を政策として実施するのに必要な手段(条令化、予算化、必要人員確保など)の目処を付ける
と言った手順を経ることになる。

大切なのは問題が何かを明らかにすること。その場で明らかにできなくても原因を探求し続けることが大切である。先送りをしたり見て見ぬふりをして結果うまく言ったケースをあまり見たことがない。先送りしたことによって肥大化し、全国報道され大騒ぎになったケースはたくさん見てきたが。
そして、政策立案の際に気を付けていただきたいのが過去の事例や他の自治体の先行事例をコピペしたり、自分や周りの職員の経験のみで構築しない事だ。ビスマルクの「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言う格言を肝に銘じてほしい。

今回は抽象的で分かりにくい内容だったかもしれません。
しかし、最近ニュースで目にした記事やコンサル・研修中に受けた相談などで、問題の深掘りをしなかった結果大きなトラブルになったケースにあまりに頻繁に出会うようになったので、ちょっと含みを持って書かせていただきました。
多分わかる方には分かって頂ける、こちらの意図をご理解いただけると信じて・・・書かせていただきました。それでは!

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