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熱と自信と旨み

旬な時期にカニは捕らえられて、そのまま
グツグツした鍋に入れられて、すっかり茹で上がった。

うはー。とカニは言った。
こうしてまた食べられるクソ人生だ。
さっきまでは生物。今は食。
だけど皮肉にも自分の味には自信があった。

カニはスーツを着た大人に捕らえられて
インタビューを受ける事になった。
初めての事態だった。

「どうして君は茹でられた瞬間に自信が湧いているんだ?」と大人は聞いた。
どうしてだろう。
だけどカニはこのまま、自分を食う人間に爆発的な多幸感をもたらす自信があった。

スーツを着た大人は、この自信を利用せずにカニを消費するのは勿体無いと考えた。

カニはそのまま、広い広い、講義室に運ばれて、カニは舞台に置かれているテーブルの上に載せられた。

カニの凄まじい自信が舞台から沸いた。

前列5列目にまでに座っている若者はその自信を浴びると、いてもたってもいられなくなって、集団就職をした。

そしてその後ろに座っていた若者達は、空いた5列の席に詰めていき、カニの自信を浴びるとたちまち集団就職をした。

やはり我々の勘は正かったと。
スーツを着た大人達は確信をして、世界各国から、若者をこの講義室に補充していった。

就職ループが誕生した。

カニが冷めると、カニの自信が低下して、就職率も低下したので、新しい旬のカニが茹でられて、自信満々のカニを舞台に補充していった。

カニが足りなくなると、
走りたてのテストステロンおっさんにも同様の自信を発する効果がある事が発覚した。

なので、
カニが準備できるまでは、テストステロンおっさんを舞台に上げて走らせた。

そうすると前例5列の若者はまた自信を持って集団就職をした。

テストステロンおっさんが足りなくなると、困るので、講義室の横の不動産を更地にしてグラウンドにして、活きのいいおっさんを数百人グラウンドで走らせておいた。

稀にプロアスリートを舞台に上げると自信がありすぎて講義室の半分ぐらいが集団就職してしまう。
そうなると、国からの補助金が減って、スーツの大人達は甘い汁を吸えなくなるので、
カニかテストステロンおっさんが最適解だった。

少子高齢化の影響で若者が足りなくなると、
おっさんが年齢を詐称して、席に座って就職するフリをしたり、
外国から若者も連れてきて就職させるなど不正が目立った。

それでも足りなくなると、就職させた若者を退職させて、失業保険を受給させながら、ジワジワ前席5列に迫らせてから、受給が終わると就職させた。

狂っていた。

汚いスーツに大人が齧った、汚い歯形の残った禁断の果実だった。

ついに、捜査のメスが入り、
大量の老若男女が講義室から検挙された。
全員が複雑洗脳されており、
狂気の空間の終焉だった。

スーツの大人達は長い歳月を経て、
元々はカニから始まった若者自立の偽善活動だった事を思い出して、自分が悪に染まっていく事の自覚の無さに教授して震えた。


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