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【ジャイサルメール③】キャメルサファリ後編

村を出発して20分ほど経つと、息子氏がオアシスと呼ぶ場所に到着した。
クーリーは都市部ほど生活インフラが整っておらず、水は村の女性たちが井戸から汲んで何往復もするらしい。言われてみれば必然なんだけど、日本とはあまりにもライフスタイルがかけ離れていて衝撃を受ける。

井戸の深さは500mと言っていたけどほんとかな

オアシスを過ぎてしばらく行くと、目の前に水平線ならぬ砂平線が見えてくる。

砂漠やん!!!!!!!!!!!

砂漠だな…としか言いようがない光景
ほかのキャメルライダーたちが続々と登場

陽が沈んだ後は、暗闇の中で息子氏がこさえてくれた料理を食べた(ライトを点けると蚊が寄ってきて大変らしい)。暗かったので何を食ってるのかもよくわからなかったが、これが殊の外美味い。2人でがっつきながらたわいもない話をしていると、興が乗ったのか鉄板ネタなのか、身の上話をはじめる息子氏。

自分は21歳になるが、生まれてこのかた学校に一度も通ったことがなく、5歳の頃からキャメルサファリの案内をしているという。
ほかの仕事に就きたいと思ったことはないのかと聞くと、彼は首を横に振った。なぜなら自分には学がないからだと。

以前、ラジャスタンを出てほかの街で3ヶ月だけ働いたことはあるらしい。そこでは洗濯などの雑用で一生懸命働いて、月収が1500ルピー(2700円)だった。
でも今のこの仕事は違う。ゲストハウスに来る客は日本人や韓国人が多く、彼らの羽振りが良いおかげで、あの頃よりずっと潤っているという。
確かに、このツアーの料金が800ルピーだと思うと、当時の月収の半分以上をたった一晩ちょっとで得ていることになる。幸福とは相対的なものだと言うが、日本の生活水準に慣れていると、どう言葉を掛けていいかもわからない。食事が済むと、ほかにやることも無いので布団を敷いて横になった。

ちなみに、市内で購入できる高額のプランにはそれなりのオプションが付いており、布団に加えてテントが用意されていたり、食事の際にダンスや歌が楽しめたり、とにかく退屈はせずに済みそうである。
当然格安のこちらにそんなサービスはなく、寝床にはブランケットがあるだけだし、息子氏も仕事を終えるとずっとスマホをいじっていたのだけど、僕にはその緩さがちょうど良かった。なにしろ安いのだから、それに勝るものはない。

基本ずっとYouTubeか何かを見ている息子氏
シンプルイズベストな僕の寝床

布団に包まりながら、息子氏のこれまでと、今後の人生に思いを馳せる。この先10年も20年も、ラクダともに観光客を相手にしながら生きていく。
きっとアルジュンもそうしてきたのだろうし、その世界しか知らない人と、そうでない人の幸福度にはどれだけの差があるのだろうなどということを考えていたら、いつの間にか眠りについていた…などということはなく、スマホを消したあともたかってくるハエの多さにはしばらく辟易させられた。

なお、キャメルサファリにはサンセットと満点の星空が見どころのひとつであるのだけど、あえて写真を載せていないあたり、その感想については察してください。
明日の朝はクーリーに戻り、いよいよジャイサルメールも最終日である。

〜旅のBGM〜
加藤登紀子/時には昔の話を

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