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“ストラテジック・ビジョン”とは何か?

KI Strategyの今井です。

今回は、“ストラテジック・ビジョン”とは何かについて紹介します。

“ストラテジック・ビジョン”とは、“企業の経営戦略や、未来のありたい姿、存在意義などを、ムービーやアート作品などで可視化したもの”です。

よく分かりませんが・・・という方も多いかもしれませんので、少しかみ砕いて解説します。

そもそも企業の経営戦略とは何でしょうか?

経営戦略には、色々な定義があります。「企業のありたい姿と現状とのギャップを埋める道筋」、「企業の重心を決めること」「他社との違いを明らかにすること」などなど

様々な定義はありますが、それを記したアウトプットは何か?と聞かれると、大体どこの企業も類似してきます。

企業のコーポレートサイトを訪れれば、「投資家向け情報(IR)」や「経営情報」などのトピックを目にします。その中に、“中期経営計画”や“経営戦略”などを設置しているところが多々あるでしょう。

欧米では、そこまでないのですが、日系企業ですと、少なくとも、上場企業ではほとんどで、中堅企業の多くが“中期経営計画”や“長期ビジョン”を策定し、公開しています。


企業の経営計画や長期ビジョンは誰のためのものか?

なぜ、時間や労力をかけて、経営計画や長期ビジョンを策定しているのでしょうか。
※そもそも、作る必要がないのではないか? 業界用語で「戦略ニヒリズム(セニム)」などとも呼ばれるこうした姿勢については、別の機会でも触れていければと思いますが。

そもそも、発表物(アウトプット)である以上、読み手がいる訳です。
ブランディングの世界では、エクスターナル・ブランドとインターナル・ブランドを切り分けて議論することがあります。

・エクスターナル・ブランドは、企業の外(社会)をターゲットに発信する情報
例)投資家や新入社員、新規顧客など

・インターナル・ブランドは、企業の中をターゲットに発信する情報
例)従業員や協力会社など

ブランド


さて、その上で、例えば、中期経営計画は誰をターゲットに据えたものでしょうか?
もちろん、その企業に期待してくれる投資家(エクスターナル)や、また、今、一生懸命働いている従業員(インターナル)向けという意味もあるでしょう。

その一方で、ある意味、中期経営計画だけでなく、サステナビリティーレポートなどもそうなのですが、担当者から、よく聞く悩みとして、“上手く浸透させたい”・・・というものです。せっかく作ってはいながら、ターゲットがたいして見ていないという、とても残念な悩みです。

私は仕事柄、企業の経営計画や経営戦略、サステナビリティーレポートなどは、出来る限り多く目を通そうと努めていますが、多くの人は、そんなことに時間は割かないですよね。

では、どうしたらいいのでしょうか?
そうした文脈でも登場するのが、“ストラテジック・ビジョン”です。

例えば、パワーポイントで作成した、中期経営計画や長期ビジョンをムービーやアート作品などで可視化してみるという手法です。

実は、上場企業などでは、コンセプト・ムービーなどの形で、公開している企業がぼちぼちではじめています。

ただ、別段、ムービーの形式にこだわる必要はありません。アーティストやデザイナーとコラボしてみることや、コンペ形式にするのも一案です。最近では、“ストラテジック・ビジョン”という文脈でなくとも、コンサルティングファームとデザインファームの連携は進んできていますよね。弊社でも、積極的に個人の方ともコラボしていきたいなと思っています。

ストラテジック・ビジョンの活用の仕方

話を戻すと、こうした、“ストラテジック・ビジョン”は、例えば、新入社員向けに、経営計画の長いパワポを説明するよりも受けがいいでしょう。どういう企業を目指したいのか、どこに向かっているのか、また、企業が何のために存在しているのか・・・ こうした、情報を凝縮して伝えることが可能です。

また、こうしたアウトプットを、“ストラテジック・ビジョン”と呼び、例えば、コンセプト・ムービーと呼ばないはなぜでしょうか。第一に、ムービーにこだわらないから、以上。でもいいのですが、それではそっけないので。

少し、補足すると、むしろ、弊社などのブティックファームの仕事の中で生まれた、という文脈が強いです。(もともと、私たちが勝手に使っている造語なので)

例えば、ファームは、企業がどうなりたいか? もしくは、主力製品の未来はどうなるか? などの問いをクライアントと日々模索を続けています。こうした依頼は、コンセプトを作って貰いたいというよりは、“戦略” Strategyを。というコンテキストの中で生まれてきたものです。(というより、既存のものが、戦略ではなく、やはりコンセプト偏重だなという思いも)

例えば、未来の姿を描こうとした際に、そのアウトプットは、動画でもアート作品でもいいのですが、その“戦略”を一緒に作ってきた人の方が、解像度が高く作成することが可能です。逆に、未来の姿だけを、外注に出してしまうと、とても浮いたアウトプットが生み出されてしまい、、、従業員もぽかん・・・としてしまうというのは良くある話なのです。

また、逆に、“ストラテジック・ビジョン”というムービーなりアート作品のアウトプットを作成することで、一緒に作っていた、中期経営計画自体が、ブラッシュアップされるということも期待されます。

つまり、中・長期先の、未来を描いているはずなのに、パワポのフォーマットから少し外すと、もう作成することは出来ない・・・これでは、従業員や社外の人にも伝わりにくい可能性が高いですよね。

例えば、映像に落としてみることで、「これ、ちょっと違くないか??」「これを目指してたんだっけ??」と。率直な違和感などが出てくることで、そもそも、目指すべき姿や、その道筋に関する議論が深まることがあるのです。

考えてみると、例えば、経営計画などの定量的なものは、“左脳をフル回転”して作成することになります。特に上場企業ですと、「数字達成できませんでした、ごめんなさい」だけでは収まらないことも多々あります。場合によっては、経営者が責任を取ることもありまし、資本市場から見放されれば、資本調達コストが高まり、結果、従業員などにしわ寄せがいくことだってあるわけですから。

そうした、“左脳をフル回転”して作成した経営計画に、ワクワクする未来を描けるでしょうか?
これ自体は議論がありそうですが、やはり、バランスが悪いことは間違いないでしょう。そういう意味では、ストラテジック・ビジョンは、“右脳もフル回転”して作成ことが求められます。

こうした取り組みが、企業やそこで働く人にとって、少しでもプラスに働くことを願いつつ、関連トピックについても引き続き、情報発信していきます。

ストラテジック・ビジョンの小休止

・“ストラテジック・ビジョン”とは、“企業の経営戦略や、未来のありたい姿、存在意義などを、ムービーやアート作品などで可視化したもの”

・エクスターナル・ブランドとインターナル・ブランド双方に活用可能(無理に公開しなくても大丈夫ですし、イントラネットやターゲットを絞るのもありです)

・経営戦略が“ストラテジック・ビジョン”を創るという文脈だけでなく、“ストラテジック・ビジョン”が経営戦略をブラッシュアップするという効果もある

・“ストラテジック・ビジョン”は、左脳だけでなく、右脳も使って、企業の経営を考察してみる手法

株式会社ライフドラムラボ代表取締役 経歴 ・早稲田大学 政治経済学部 国際政治経済学科卒 ・野村総合研究所 趣味 ・囲碁と途上国巡りで囲碁においては、第54回全日本大学囲碁選手権で全国制覇 その他 ・​Social Impact Act編集長、SDGs Insight代表