短歌連作『五月のプライド』

忘れたいことを数える まだ生きていたい理由が数えられていく

僕の名を忘れた祖母が僕の名を抱きかかえている春の陽だまり

入院をしたら見舞いに来てくれるだろう友らの序列をつくる

五巡目のジェンガ静かに抜くような愛の伝え方で精いっぱい

前提として君の持つ正義には僕とは違うきらめきがある

っぽいと言われたことのある服でなるべく遠い海に飛び込む

剥がせないガムのようだとプライドを定義してから履き替えた靴

蓋付きのごみ箱を買う 見たくないものはごみって決めてしまった

週末はまっさらな辞書を持ち寄って波が生み出す語彙を調べる

あらかじめ軌跡は定められていてそれでも美しく飛べる鳥


サポートをいただいたら、本屋さんへ行こうと思います。