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海を見ながら #シロクマ文芸部

最後の日、僕はギターを手に浜辺を歩いている。
毎年最後の日、つまり大晦日は、高校のバンド仲間の四人で、海を見ながら過ごすのが恒例となっていた。

リーダーでボーカルのコウ。
ドラムスでムードメーカーのユキ。
キーボードで……僕の憧れだったマイ。

年越しまでバカ話をしたり、昔の思い出に浸ったりして時を忘れて過ごしたものだ。
でも今年は……。

僕は海を見ながら、三人と電話で話したことを思い出していた。
コウは不機嫌そうだった。
「大晦日? 仕事が忙しくてそれどころじゃないんだよ」
ユキは困ったような声を出した。
「年越しはやっぱり彼と過ごしたいし…」
マイはきっぱりとこう言った。
「ごめん、カイ。私結婚するの。……だからあの場所にはもう行かない」

海を見ながら、僕の頭の中を占めていたのは、ある決意だった。
「絶対、みんなに来てもらう……」

数年後の大晦日、年末恒例の歌の祭典。
「初出場のカイさんは、本人の希望で地元の海から歌ってもらいます」
司会者の声を合図に、僕は浜辺に作られたステージに立つ。
見下ろすと、見渡す限り観客で埋め尽くされていた。
その最前列で、声を上げている三人の顔を見て、僕はギターを思いっきりかき鳴らした。

小牧幸助さんの企画に参加させていただきました。
紅白を見ながら書いてます。
みなさん、今年一年ありがとうございました。
よいお年を!

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