なかひろし

I☆YOKOHAMA ショートショートnote杯をきっかけに投稿始めました。

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マガジン

  • シロクマ文芸部参加作品

    シロクマ文芸部に参加させていただいた作品です。

  • 毎週ショートショートnote参加作品

    毎週ショートショートnoteの企画に参加させていただいた作品です。

  • ショートショートnote杯 10+1作品

    ショートショートnote杯完走しました。投稿した作品です。

最近の記事

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星のオムライス

たくさんの星が、まるで灯りのように見える街の片隅に、男が妻と小さなレストランを開いていました。 ある日の夜、男は空を見上げてます。 灯りのように見える星をひとつひとつ結んでみると、オムライスの形になりました。 オムライスは妻の大好物です。 男はオムライスをメニューに加えようと思い、次の朝から何日も試行錯誤をして、新しいオムライスを完成させました。 オムライスを食べたお客さんは驚きます。 「こんなにおいしいオムライスは食べたことがない」 オムライスは評判になり、お客さんが

    • flower shower #シロクマ文芸部

      花吹雪が舞い、顔の上に落ちてきた。 散り際の桜の木がある川べりで、一人寝転んでいたケンは、突然降ってきたたくさんの花びらに驚き、思わず起き上がった。 ケンの視線の先には、カオルの笑顔が見えた。 真新しい制服に包まれ、手には桜の花がついている。 「……何だよ」 ケンは顔についた花びらを払った。 「ぼんやりしてたから、桜のシャワーで目を覚まさせてあげようと思って」 カオルはケンの中学時代の同級生。 学級委員で成績も優秀だったカオルは、今年の春から、進学校として有名な高校に通っ

      • 月に願いを #シロクマ文芸部

        「朧月〜風を待つ身の〜淋しさよ〜」 突然立ち上がり、俳句を詠み出したケンの顔を見ながら、私は呆気にとられていた。 今日は私の誕生日。 ケンが予約した素敵なレストランでディナーを楽しんでいた。 メイン料理を食べ終わり、次はデザートかな、いやもしかしたらサプライズでプロポーズかも、なんて思っていたところで、ケンが立ち上がり、朗々と俳句を詠んだのだ。 「いったい何なの?」 私は気を取り直し、ケンのジャケットを引っ張って、椅子に座らせた。 周りの客が、こちらを見てひそひそ話してい

        • chocolat test #シロクマ文芸部

          「チョコレート?」 金庫の前で俺は途方にくれていた。 タワーマンションの一室。 羽振りのよさそうな住人の留守を見計らって、俺は部屋の中に入り、程なく金庫を見つけた。 泥棒を生業として十年以上が経つ。 セキュリティに守られたマンションも、金庫に守られたお宝も、俺にとっては簡単に入れるし、簡単に盗み出せる。 ただ……金庫の中に入っているのが、チョコレートだとは、夢にも思っていなかった。 俺はチョコレートを手に取ってみた。 金庫の中に入っているぐらいだから、よほど高価なチョコレ

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        星のオムライス

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        • シロクマ文芸部参加作品
          9本
        • 毎週ショートショートnote参加作品
          21本
        • ショートショートnote杯 10+1作品
          11本

        記事

          snow dream #シロクマ文芸部

          雪化粧で病院の中庭は覆われていた。 「まだ降ってるわね」 病室の窓を開け、外を見ていたママがそう言って振り向いたが、私を見て顔が曇った。 「……どうしたの? リコ」 私は黙って首を振った。 明日は手術の日。 産まれたときから病弱で、入退院を繰り返している私に、付き添っているのはいつもママだった。 私にパパはいない。 パパは空からリコのことを見てくれてる、なんてママは言ってるけど、手術のときぐらい来てくれてもいいのに、と私は思う。 「寒いから窓閉めて」 私はそうママに言い、

          snow dream #シロクマ文芸部

          海を見ながら #シロクマ文芸部

          最後の日、僕はギターを手に浜辺を歩いている。 毎年最後の日、つまり大晦日は、高校のバンド仲間の四人で、海を見ながら過ごすのが恒例となっていた。 リーダーでボーカルのコウ。 ドラムスでムードメーカーのユキ。 キーボードで……僕の憧れだったマイ。 年越しまでバカ話をしたり、昔の思い出に浸ったりして時を忘れて過ごしたものだ。 でも今年は……。 ◇ 僕は海を見ながら、三人と電話で話したことを思い出していた。 コウは不機嫌そうだった。 「大晦日? 仕事が忙しくてそれどころじゃな

          海を見ながら #シロクマ文芸部

          ダニー•ゴー

          「thank you」 錆びついた机の上に、釘で書かれたような文字を、私はぼんやりと眺めている。 ダニーがいなくなった。 別れの挨拶もなく、突然どこかへ行ってしまった。 相変わらずタバコ臭い部屋の中で、私は一人、取り残されている。 何が「ありがとう」だ。 欲しいのは、そんな言葉じゃない。 「寒いじゃねぇか、ジェニー」 ダニーの部屋に来るときはいつも、私はまず窓を開けた。 部屋の中にタバコの匂いが充満していて、空気を入れ替えたかったからだ。 真冬でも窓を開ける私に、ダニ

          ダニー•ゴー

          ハッピーバースデー #シロクマ文芸部

          誕生日だからって何かが変わるわけじゃない。 ただ一つ年を積み重ねるだけ。大学受験を控えた今は特に、浮かれている場合ではない。 そんなことを考えながら登校した僕は、教室に入った。 案の定、誰からも祝福の言葉はない。 そもそもクラスメイトの誕生日なんて知らないんだろう。 席につき、いつものようにカバンから教科書を出し、机の中に入れようとした。 しかし、なぜかうまく入らない。何かが奥につかえているようだ。 机の中に手を伸ばして取り出してみると、きれいにラッピングされた細長い箱が

          ハッピーバースデー #シロクマ文芸部

          escape #小牧幸助文学賞

          飲みたくもないコーヒーを今日もまた飲む。 小牧幸助文学賞に参加させていただきます。

          escape #小牧幸助文学賞

          秋桜と紅葉 #シロクマ文芸部

          「秋桜になれるかな……」 前を歩く彼の背中に、私はそっとつぶやいた。 彼は振り返りもせず歩き続ける。 聞こえなかったようだ。 私は少しホッとして、そして少しがっかりした。 私の姉であるさくらの結婚式に参列した帰り。 秋晴れの雲ひとつない天気の中、紅葉がきれいな道を彼と一緒に歩いていた。 さくらと彼は小学校の同級生。 近所に住んでいたこともあり、さくらは彼とよく遊んでいて、私も時折り混ぜてもらっていた。 私は兄ができたようで嬉しく、一緒に遊ぶのをいつも心待ちにしていた。 そ

          秋桜と紅葉 #シロクマ文芸部

          探偵に向いてない先生 あらすじ

          「探偵に向いてると思うんだよなぁ」 奈良は、高校のときのクラスメイトで片想いしていた楓のこの一言で探偵になったが、仕事のない日々を過ごしていた。 そんなある日、楓が奈良の仕事場にやってきた。 高校卒業して以来、会っていなかった楓の来訪に驚く奈良だったが、楓が理事長をやっている学校の先生にならないかと言われさらに驚いた。 突然の話に戸惑う奈良に、楓はある調査を依頼する。 学校を辞めた先生が、教室の黒板に意味不明なメッセージを残しており、その謎を解いて欲しいと言うのだ。

          探偵に向いてない先生 あらすじ

          探偵に向いてない先生 第3話

          ◇ 「この間、僕が清水先生のことを聞いたときのことだけど……」 校内の廊下を歩きながら、奈良が話を向けると、リカは首を傾げて、なんのことだっけ、という顔をした。 「大嫌いって…そう言ってたよね」 「その話か……うん。言ったよ」 「なんか嫌いになるような出来事が、あったのかな」 リカは、うーんと唸り、そのまま立ち止まって黙ってしまった。 「あ、いや…話したくなかったら、全然話さなくていいんだ。…ごめん、変なこと聞いちゃったね」 奈良が慌てて謝ると、リカは笑いながら、 「優しい

          探偵に向いてない先生 第3話

          探偵に向いてない先生 第2話

          ブルーフォレストは、立花学園から二駅ほど離れたところにある小さな店だった。 「すみません、まだ開店前で…」 奈良が店の中に入ると、扉近くにいた40代と思われる大柄な男にそう声をかけられた。 「ごめんマスター、私の知り合いなの。ちょっと席借りるね」 店のカウンターの中からリカが顔を覗かせた。制服じゃないからか、学校にいるときと少し雰囲気が違う。 マスターと呼ばれた男は、無言で頷き、扉を開け外に出て行った。 「ありがと。来てくれて」 「…もしかして、ここで働いてるの?」 「うん」

          探偵に向いてない先生 第2話

          探偵に向いてない先生 第1話

          探偵という仕事に憧れを抱いたのはいつからだろう? 奈良宏太は、小さいときからアニメや漫画に登場する名探偵を見て、心がおどる感情を持ったことが幾度もあった。 でも奈良が、職業としての探偵を明確に意識したのは、高校のとき、当時片想いしていたクラスメイトから言われた言葉だ。 「探偵に向いてると思うんだよなぁ。奈良くんは」 この一言がなかったら、奈良は探偵という仕事に就くことはなかっただろう。 ただ現実の探偵の仕事は、奈良が想像していたものとは、まったく違っていた。 飼ってい

          探偵に向いてない先生 第1話

          カフェ4分33秒 #毎週ショートショートnote

          失恋した私は、傷ついた心を抱え、いきつけのカフェに立ち寄った。 ぼんやりと注文もせずに座っていた私に、マスターが紅茶を運んできた。 「少し待つことになりますが、蒸らすと美味しくお召し上がりになれますよ」 「どのくらい待てばいいんですか?」 心遣いのお礼を言いつつ聞くと、マスターは砂時計を机に置いた。 「この砂が落ちきるまで待ってください。4分33秒かかります」 「……ずいぶん細かいんですね」 「はい。この茶葉は、蒸らす時間として4分33秒が最適なんです」 「そうですか……」

          カフェ4分33秒 #毎週ショートショートnote

          ラストパス #シロクマ文芸部

          文化祭の日、私は憂鬱だった。 昨日、私たちバスケ部は県内の強豪校と対戦していたが、必死にくらいつき、一点差まで詰め寄っていた。 残り一分。ボールを持った私は、シュートのチャンスを窺う。そのとき、キャプテンがゴールの方向に走るのを視界に捉えた。 「カオリ!」 キャプテンが叫んだ。私はパスをキャプテンに出す……と見せかけて、シュートを打った。 シュートは惜しくも外れ、試合終了のブザーが鳴った。 文化祭でバスケ部は、カフェを開いていた。 タイミング悪く、キャプテンは同じシフトに

          ラストパス #シロクマ文芸部