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お金の手綱を握る

お金との関係のありかたについて私が目指すのは、他界した母だ。
堅実な金銭感覚を持ちつつメリハリのある使い方をする人だった。

家計の管理は母が担当していた。

郊外の町の中流家庭。
小さな分譲マンションに住み、娘2人の学費のために母もフルタイムのパートで働いていた。

決して裕福ではないし、「できれば公立の学校へ行ってほしい」と言われていたけれど、本当に必要なことがお金のために制限されることは一度もなかった。

小学生のときに買ってもらったエレクトーンは、マツダのファミリアと同じ値段だった。
私立の大学に進学し、一人暮らしもさせてもらった。仕送りは全て母のパートで捻出していたらしい。

それがどれだけ大変だったか、ありがたいことであるかは、その頃の母と同じ年代になった今、痛いくらいによくわかる。

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父は母の作った家計のシステムを絶賛する。
年金だけで生活していけるのは母のおかげだと何度も言う。

実家の食事は贅沢なものではなかったと思うが、季節感があり、栄養のバランスも取れていて、なによりおいしかった。

遺品の整理をしていると、母の持ちものが品質のいいものばかりだとわかった。
長く使うものはしっかりしたものを買う。母らしいお金の使い方だ。

不要なものは買わない。
節約のためではなくて、何事にもムダを嫌う母の信条によるものだろう。

身の丈に合ったコンパクトな分譲マンションを購入したのも父と母らしい選択だ。
父のリタイアに伴い両親がまず着手したのは、住宅ローンの早期返済だった。

家や車は背伸びせずに実用的で手頃なものを購入し、その代わり教育や日々使うものにはきちんとお金を使う。お金のために無理をしない働き方を選んだ父と母はまさに「手堅い」。

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これから自分が父や母のように生きていくとは思わない。
時代は令和、私には子どもがいないし、生き方が違う。ここは東京だ。

お金の稼ぎ方や使い方には、その人の人生へ向き合う姿勢が映し出される。

母は目先の収入と支出に翻弄されず、遠く先のことを見通して修正を加えながら「今」を組み立てていく能力の持ち主だったと思う。

お金に飲み込まれず、常にその手綱を握っていた母。
その精神を受け継いで、私らしいお金との関係を築いていきたい。

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母の遺品の整理をしていると、投資信託の資料が出てきた。

母にも攻めの構想があったのだ。
今生きていたらどんな運用をしただろうか。



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