見出し画像

<SS>教室の革命 ~生徒たちに自信を~


第一章:偏差値教育の影

悠真ゆうま瑠璃るりは、同じ中学で指導をしている20代の教師だ。ふたりは同い年でとても気が合う。ある日の放課後、教員室でふたりは深刻な顔をして話をしていた。

「瑠璃、君も気づいてるよね?今の学校の教育って、何かおかしいんじゃないか?」悠真が言った。

瑠璃は目を細めて考えた。「うん、私も感じてるよ。生徒たちは偏差値と競争に追われて、本当に大切なものを見失っている気がする」

「そうだよね。偏差値教育や競争の教育って、すごくプレッシャーだよね。生徒たちは成績が全てみたいに思ってる」悠真が言った。

瑠璃は頷いた。「本当に。そして、そのプレッシャーが大人になっても影響するんだよね。すぐに結果を求めてしまう癖がついて、失敗するとすぐに自信を失ってしまう」

「そう、成長には時間がかかるのに、結果を急ぐから挫折してしまうんだ」悠真が付け加えた。

「それに、結果がすぐに出そうなことばかり選んでしまうよね」瑠璃が言った。

悠真は深く頷いた。「例えば、やりたいことが見つかったとしても、結果が出ないとすぐにやめてしまう。それが、今の教育のせいなんじゃないかと思うんだ」


第二章:教師の役割

「学校の成績だけが全てじゃないよって、生徒たちに分かってもらいたいな。教師として、どうすればいいと思う?」瑠璃が尋ねた。

悠真はしばらく考えた後、言った。「例えば、勉強ができなくてスポーツが得意な生徒に対して、『君はスポーツが得意だから大丈夫』って言うのは、実は問題なんだ。それをすると、その生徒に、勉強ができないコンプレックスを与えてしまうから」

「そうだよね。それって、勉強ができるのが前提っていう考え方だもんね。それじゃあ、生徒たちにコンプレックスを持たせてしまうよね」瑠璃が言った。

「そういうことの積み重ねで自信を失っていく生徒も多いと思うよ」

「自信が持てないと、社会に出てから苦労するよね」


第三章:新しい道

「生徒たちが自信を持てるような教育をするのが僕らの役目だよね」と悠真は真剣な表情で言った。

瑠璃は思い出したように話し始めた。「私の大学時代の友だちが〇〇中学で野球部の顧問をしているの。前に彼が話してくれたんだけど、彼が顧問になったばかりのころ、部員がミスをすると他の部員がすごく責めていたんだって。でも、彼の指導で変わったの。例えば、ミスをした部員がいても、そのプレイで良かった点を見つけて、みんなで褒めるようにしたんだって。もちろん、素晴らしいプレイがあれば率直に褒めるよ。その結果、野球部全体の雰囲気が明るくなって、ミスも減ったって」

悠真は瑠璃の話に興味津々で聞いていた。「それはすごいね。一つのミスを責めるのではなく、良い点を見つけて褒める。それがチーム全体を良くするんだね」

「そうなの。それが私たちの教育にも応用できると思うんだよね」瑠璃は目を輝かせて言った。「例えば、テストで点数が低かった生徒がいたら、そのテストで正解した問題に焦点を当てて、『この問題はしっかり解けているね』と褒めるとか」

悠真は頷いた。「いいアイデアだね。それで、生徒たちも自信を持って、次に向かっていける。失敗を恐れずに、新しいことに挑戦する勇気が出るかもしれない」

瑠璃は笑顔で返した。「そう、失敗は成功のもとって言うじゃない。私たちが生徒にその価値観を教えられたら、きっと素晴らしい未来が待っていると思う」

この日から、悠真と瑠璃は新しい教育方針を試し始めた。そして、その成果はすぐに現れた。生徒たちは自信を持ち始め、失敗を恐れず、新しい挑戦をする生徒が増えていった。


第四章:柔軟な対応

悠真と瑠璃は、偏差値教育にも柔軟な対応を心掛けるようになった。テストの点数だけでなく、生徒一人一人の個性や才能に焦点を当て、それを伸ばす方法を探し始めた。

「偏差値が高いからって、それが全てじゃない。君たちそれぞれに素晴らしい才能があるんだから」悠真が生徒たちにそう伝えるようになった。

瑠璃も同じように、「テストの点数は一つの指標だけど、それだけが君たちの価値じゃない。大切なのは、自分自身がどれだけ成長できるか、そしてその過程を楽しむこと。」と教えた。

この新しい考え方が学校全体に広がり、生徒たちも教師たちも、教育に新しい風が吹き始めた。偏差値だけでなく、多様な才能や個性が認められ、それぞれの生徒が自信を持って成長できる場が広がっていった。

そして、それはただの一つの中学校に留まらず、徐々に他の学校にも影響を与え始めた。新しい風が、教育の未来に吹き始めたのだった。



この記事が参加している募集

私の作品紹介

みらいの校則

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?