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鴨居玲展最終日。

「鴨居玲-1983年2月3日、私」
本日、鴨居玲展最終日です。

今日も朝から多くの方に
ご来館いただいております。

・・・・

毎日作品と対峙して感じたのは、
鴨居作品から発せられる、
強烈な
「生きるとは何か?」
というメッセージ性。

作品を“見る”という行為だけで、
私たちの心を揺さぶってくる
鴨居玲の絵画。

色なのか、筆致なのか、
形なのか…。
見ることで我々が知覚するものは
それら具体的なものですが、
明らかに、それを含んだ
筆舌に尽くしがたい他の「何か」が、
作品から発せられていて、
心に響き、訴えてくるのだと
改めて感じました。

鴨居玲展は、
各メディアでもお話した通り
実はコロナ前から
展示の構想があり、
その内容と作品の印象故に、
展示の機会を逃し逃し、
この度やっと、開幕に至りました。

“死”に魅了され、
やがて自ら死を選択する鴨居。

そのネガティブな思考の数々は、
我々令和に生きる人間にとって、
まったく理解できないもの、
ではなく、
もしろとても人間的だと感じ、
どこか共感してしまうもの
なのかもしれません。

どんなに機械化が進み、
どんなに日常が便利になろうと、

人の心の複雑さは今も昔も変らず、
効率的にも、
簡単にもならないものだと思います。

むしろ、
世界が急速に変容し、単純、便利化したからこそ、
そうはならない人の心が取り残され、
浮き彫りになっているのが
現代なのかもしれません。



複雑な生命だからこそ醸し出される
鴨居玲作品の、味わい深い、美しいものが、
我々の心を今も捉えてやみません。

ご高覧、誠にありがとうございました。

(高梁市成羽美術館 吉尾 梨加)


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