やはり炭素クレジット利用はグリーンウォッシュだ

アゴラに寄稿しました。
今週、J-クレジットの登録簿等で軽微な誤りが発生したと政府から公表されました。

広く読まれるアゴラ記事では武士の情けで触れませんでしたが、こちらのブログではもう少し突っ込んだことをメモしておきます。

委託事業者のサイトにお詫びのリリースがありました。

J-クレジット制度では、登録簿システムにクレジットの創出・移転・使用などが逐次記録される仕組みになっており、当社は、制度発足当初よりその運営等業務を受託しております。

これまで認証されたクレジットのうち4%程度に、申請書類と登録簿等の情報に齟齬があることを確認いたしました。

この齟齬は、個別プロジェクトの申請書から登録簿等に関連情報を転記する際に、データシート上のリンク設定の誤りや誤った数値の入力など、いずれも人為的なミスが原因となって発生したものです。

転記にあたっては複数人で作業・チェックを実施しておりましたが、関連情報の意味や仕様用途についての周知・徹底が十分ではなかったと認識しております。

リンク先のようなすごい企業に入社できる優秀な社員の皆さんが複数人で作業・チェックしていて、登録簿から転記する際に人為的なミスが起こったということは、関わっていた全員が見落としたということになります。こんなことが起こり得るのでしょうか?

通常、組織の大小を問わず入力や転記等の人為的ミスを未然防止するために行われる対策はダブルチェックです。

従来1名で行っていた入力作業でミスが発生した場合に、担当者1名+確認者1名によるダブルチェックを導入することでほぼ100%再発を防ぐことができます。

本件では対策としてさらなる増員を図るそうですが、根本的な原因が特定できていないのではないかと心配してしまいます。

さて、アゴラ記事でも紹介した海外の杜撰な森林クレジット等と違って、日本のJ-クレジットは政府が行う厳密な制度であり、事業者のカーボンニュートラルや世界の脱炭素に貢献できるものという印象が広まっていますが、公式の説明資料にはこんな下りがあります。
こちらの、スライド3枚目。

https://japancredit.go.jp/data/pdf/credit_005.pdf

•クレジットは、排出削減実績を主張する権利を“証券化”したようなものであり、自らも排出削減に努めているが、もっと(実態以上に)排出削減した“ことにしたい”者へ、移転・売却することが可能。

•こうした売買が、クレジットの創出者と購入者との間の自由取引(量も価格も自由)で行われることにより、「市場メカニズム」の下、地球温暖化対策の資金を循環させ社会全体で最適に配置させることが目的(認証それ自体、あるいは認証を通じた排出削減・吸収の“称揚”が最終目的ではない)。

「もっと(実態以上に)排出削減した“ことにしたい”者へ、移転・売却する」
「排出削減・吸収の“称揚”が最終目的ではない」
「資金を循環させ社会全体で最適に配置させることが目的」

カーボンオフセットに取り組んでいる日本企業の皆さんは、これをどこまで認識されているのでしょうか。やはり炭素クレジット利用はグリーンウォッシュです。

https://agora-web.jp/archives/240319220715.html

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